本と旅とそれから 壬生義士伝/浅田次郎

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壬生義士伝/浅田次郎

「書店ガール」のどの巻だったかに、主人公の書店でブックフェアが開かれる話があり、そこで取り上げられた浅田さんの本が本書でした。すでに記憶が怪しくなってますが、確か、「蒼穹の昴」のシリーズを敢えてはずして本書を選んだ、というようなことだったかと。
「壬生義士伝」は、ずっと読みたい気持はあったものの、新選組の話は一時たくさん読んでちょっと食傷気味だったこともあって何となく手を出さずにいましたが、「書店ガール」をきっかけに、今回読んでみました。
壬生義士伝

壬生義士伝(上)(下)/浅田次郎
(文春文庫)


名作でした~~。

新選組の話といっても、主人公は歴史上有名なメンバーたちではなく、吉村貫一郎という南部藩(岩手県)出身の、途中入隊の隊士。読んでいる間、私はこの人物は架空なのかと思っていましたが、さっきググってみたら実在なのですね。といっても、本当のところどういう素性の侍だったのか、確かなところは残っていないようですが。

この吉村貫一郎がどういう人だったかを、元新選組隊士たちをはじめ、彼と何らかの関わりのあった人々が語っていき、それが重ねられることで、この人物や、彼の息子・嘉一郎がどんな人間だったのかをじっくり描いていく形の小説です。「永遠のゼロ」と同じ形式ですね。

――うん。雰囲気も「永遠のゼロ」と似ています。
主人公・貫一郎を悪く言う人の話から始まっているところなども。「永遠のゼロ」では、はじめ主人公は生きることにしがみつく女々しいヤツ、みたいに語られていましたが、本書の主人公は金にがめつい守銭奴、とけなされる。やがて段々と、なぜ貫一郎が金を欲しがったのかが明らかにされてゆき、それが家族への愛ゆえであり、金に執着する己の姿に、貫一郎は心の中で泣いていたことだろう、というふうに話は続いていきます。

新選組の話というのは、ほとんどハッピーエンドにはならず、様々な形で死んで…多くの場合殺されて終わるもの。この小説も、主人公はある意味悲惨な死を迎えるのですが、それがほぼ冒頭に語られるのですね。これもよくあるパターンですが―—結末が最初に提示されて、そこに至るまでの物語がそれに続く、という。

確か映画化されていたよなぁ、中井貴一さんと佐藤浩市さんが出てたなぁ、とこれまたググってみましたら、そうそう。中井さんが主人公・貫一郎でした。佐藤浩市さんは新選組の斎藤一を演じておられて、彼が物語の語り手という形になっているようでした。
あと、テレビドラマにもなっていたんですね。こちらは主人公が渡辺謙さん。
中井さんと渡辺さんだったら、うーん、渡辺さんの方がイメージには合うかな。実際の映像を見てないので、はっきりとは言えませんけど。中井さんってやっぱり私にはシティボーイ(って単語が何となくレトロな気が…)のイメージです。

主人公が金や家族や故郷に執着し、ののしられようと、血まみれになろうと、決して投げ出さなかったその姿が、何となく渡辺謙さんのギラギラした演技と重なります。

小説、フィクションということで、現実にはあり得ない、貫一郎やその息子・嘉一郎(父の死後、函館戦争で戦死します)の今わの際の心の内が描かれる部分があるのですが、これはもう、読んでいて泣けます(心の中で、ですけど)。特に嘉一郎が、何度も「母上様」と、故郷に残してきた母に呼びかけ、たった一人で死んだ父を、一人ぼっちで三途の川を渡らせることはできないんだ、自分は父のことがそれはそれは好きだったのだ、と語るところは――。
幕末は本当に多くの人が死んでいったのですねえ。

侍というのは、いわゆる侍魂のような、気高いと言えるようなものを持っていたのかも知れませんが、固定観念に縛られずに見れば、さして意味のないものに縛られた存在でもあったように思います。
貫一郎は、そうしたものに縛られず、自分が心から大切と思えるもののために、恥も外聞もなく全力を尽くした男でした。そして、浅田さんの描く本書の語り手たちは、口々に彼こそ、本当の侍だった、と称えます。

「——だっぺ」、「○○っこ」、「んだば」といった様々な南部弁が登場するのですが、この、失礼ながらいかにも田舎っぽい喋り言葉が、物語の中では実に美しい、人の真実の心を語る言葉となっています。やはり言葉は心を表すものなんだなぁと、改めて思われました。


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