本と旅とそれから 海賊と呼ばれた男/百田尚樹

本と旅とそれから

海賊と呼ばれた男/百田尚樹


以前話題になって読みたいと思ったものの、人気なので図書館ではなかなか借りられずにいた本が、しばらく経って棚に並ぶ。よくあるパターン。
なので、私の読書は(というか、図書館ユーザーは皆そうかも)世間のトレンドからは1年ぐらい遅れている感じ。
海賊と呼ばれた男

海賊と呼ばれた男/百田尚樹
(講談社文庫)


本書もそんなタイミングでしょうか。
あ、これって映画化もされたから、本が話題になった時からはさらに遅れているかも。

話題になった時にどこかで、主人公のモデルは出光興産の創業者だと聞いていました。作中で描かれる日章丸事件というのも、内容は知らなかったけれど何となく聞いたことがありました。

昭和の時代にはおそらく何人もいたのではと思われる、一代で何もないところから大きなビジネスを作り上げた人物。こういうの、何て呼ぶのだったかなぁ…。
本書はそうした人物のひとり、国岡鐡造(=出光興産の創業者、出光佐三)の、いわゆる立志伝。

何より圧倒されるのが、この人物のバイタリティ、そして精神力。
私は自慢じゃありませんが根性無しだし、昨今は体調不良なので一層、何かというとヘタっとなるので、こうした生命力と気力に満ちた人物が眩しい――というか、何だか信じられないよという思いです。

何度失敗してもくじけない。投げ出さない。どんなに大きなリスクを引き受けることもひるまない。緊張にも耐える。難問にもぐいぐい挑む。
それができることこそが、成功の秘訣なのかと思えるほど。
もちろん、商機を見極める目や、状況を分析して判断する力が必要なことはもちろんですが。

主人公・国岡鐡造はまた、岩より固い哲学を持っていて、たとえばそれは「社員は家族」とか、「国のために尽くす」といったもの。戦後の何より苦しい時代にも、ひとりも解雇しなかったし、リスクが大きくて、利益が出るかどうかも怪しい、といった時に判断の基準となったのが、その事業が日本全体の利益になるかどうかということ。

小心者の私などは、巨額の負債を継続的に取っていかねばならない石油貿易というビジネス自体が、とても怖くて手が出せないもの。まあ、非凡な人と自分を比べても仕方ないのですが。
国岡鐡造という人も、もちろん、様々なプレッシャーを受けて、決してまるで平気だったわけではなく、気もふさぎ、痩せるほどの思いをしているわけですが、それでも彼はそれに耐えたし、何度もそれを繰り返すことができたのです。

戦争、そして戦後の石油メジャーとの戦い、そのほか様々な事柄が描かれる主人公の一代記で、それぞれについていろいろと考えさせられます。

ただ、興味が湧いてウィキで出光のことを読んでみてひとつ残念だったのは、実在の出光佐造という人が、決して物語に描かれているような、現代の価値観で見てもすべて立派な人物というわけではなかったということ。
彼の娘さんの談話として、実在の出光佐造はいわゆる男尊女卑の人物で、娘にはほとんど価値を認めていなかった、という趣旨の言葉が残されているのです。

ああやっぱり、時代を超えてすべて立派と評される人物なんていないのだな、と、考えてみれば当たり前のことがわかった、というところでしょうか。小説はやっぱりフィクションなのだなー―って、だから当たり前のことです。

現実の、見たくないところから都合よく目を背けて、実際にはあり得ない、見事な実業家の物語を楽しみました。

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  1. 2017/07/12(水) 22:00:07|
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