本と旅とそれから 烏に単は似合わない、烏は主を選ばない/阿部智里

本と旅とそれから

烏に単は似合わない、烏は主を選ばない/阿部智里

をを。思いもかけず出くわしたという感じの、実に面白い和製ファンタジーでした!
この2冊はシリーズの第1、2巻目なのですが、残り4冊をを粘り強く図書館で予約して借りるか、購入してしまうか、ちょっと迷いました。目下のところは借りることにしようと思っています――というのも、シリーズの最後(最新、ということでもあります)の2冊は、まだ文庫化されていないものですから。
そんなわけで、次巻以降を読めるのはちょっと後になるかも知れないので、とりあえずはこの2冊の感想を書き留めておこうと思います。

この本を知ったのは、電車の車内広告。シリーズ完結編の最終巻を広告するものでしたが、作品のことも作家さんのこともまったく知らなかったので最初はあまり気にしなかったものの、何度も見かけたので図書館で検索してみたら所蔵されていたので借りてみました。車内広告がきっかけになったのは、池井戸潤さんの「下町ロケット」以来です。
烏に単は似合わない
烏に単は似合わない
烏は主を選ばない/
阿部智里(文春文庫)


若干20歳の早稲田大学学生の阿部さんのデビュー作が1巻目、次作が2巻目。
文章が上手い~。大変なめらか。
正直、2冊ともタイトルがいまひとつな気がするのですが――まあ、タイトルというものは、作家さんと編集者さんとで考え抜いて決まるものでしょうから、きっとこれでよいのでしょう。

2巻目巻末の解説に書評家さんが、小野不由美さんの「十二国記」、上橋菜穂子さんの「獣の奏者」に並ぶファンタジー作品だと称賛しておられますが、同感です。あえて言えば、私はカタカナ固有名詞の和製ファンタジーにちょっと違和感を覚えるので、単に「十二国記」を想起する非常に引き込まれるファンタジーだ、と言いたいと思います。さらに言えば、「十二国記」は漢字ベースのファンタジーではありますが、紡ぎ出される世界の雰囲気は、「日本」というよりは「中国」。その点、本シリーズは色濃く「和」です。

というのが、物語世界に生きる「ひとびと」は八咫烏(やたがらす)の一族だから。なんと、卵で産まれて、鳥に変身して空を飛ぶのです。それが、人間の姿をしている間は、平安朝貴族絵巻って暮らしをしているのですから――あ、もちろん、貴族がいれば平民もいるんですが。

それさえ除けば、1巻目の前半は、「十二国記」に加えて「源氏物語」でした。
「若宮」の后候補として、有力貴族四家から4人の姫君が「登殿」し、春夏秋冬の名が付けられた館に住み、季節の行事に興じ・・・とか、ホント源氏物語。
それが次第に――というか、この1巻目、最初と最後で主人公が違うのですが、この、はじめの主人公がその座から転がり落ちる瞬間がショッキング。

そして、最初は王朝絵巻だった物語が、次第にミステリっぽくなるところもちょっと面白い。

さらに2巻目がこれまた驚くのは、1巻目と同じ時間軸に展開する物語を、サイドを変えて描いていること。
つまり、1巻目は姫君たちの物語で、「若宮」はさほど登場しないのですが(それが最後に登場するや、天才探偵よろしく次々謎を解いて物語を収めてしまうのが、少々不満といえば不満)、2巻目は、その若宮の近習として地方からやって来た少年の視点から、同じ頃若宮は一体何をしていたのだ、という物語が展開します。つまり、この2冊はほとんど同時に出来上がっていたらしいのですね。デビュー作だというのに。

「十二国記」と比べはするものの、よく考えれば、地球規模で世界創生されていた「十二国記」ほど、現段階では本シリーズの世界は広がっていません。ひとつの国の、君主の宗家と貴族四家の物語でしかないのです。なのに、なぜこんなにのびのびとした世界の広がりを感じさせるのでしょうか。
世界の作り込みはさして緻密ではないのですが、やっぱりこれは――人物描写かしら。

特に、2巻目の主人公、北国から来た少年・雪哉(ゆきや)は実に生き生きと描かれていて、感情移入というか、俄然応援したくなります。特別な星の下に生まれ、完璧な美貌と君主としての能力に溢れた若宮より、才気煥発ながら、人間的な悩みや戸惑いを抱え、慌てたり泣いたりしながらもがきつつ前に進んで行く姿が、実に魅力的です。

いやぁ~、あれこれ手を出していると、ステキな本に出遭えるものです!


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tag: 阿部智里 八咫烏シリーズ 
  1. 2017/09/19(火) 22:00:00|
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