本と旅とそれから プリズム/百田尚樹

本と旅とそれから

プリズム/百田尚樹

「プラチナデータ」のすぐ次に読んだのですが、本書もまた、ひとりの人間の複数人格の話で、ちょっとびっくり。裏表紙の「あらすじ」に一応目を通してから借りてきたのですが、そこには「感涙必至の、かつてない長編恋愛サスペンス」とあって、ほとんどそのフレーズだけで借りることにしたのです。

感涙必至ぃ~?
全然、うるっともほろっともこなかったんですけど。
プリズム

プリズム/百田尚樹(幻冬舎文庫)

同じ多重人格の人物を描くといっても、作品の基調がぜんっぜん違う二つの小説。
「プラチナ」はエンターテイメント作品であり、SF――フィクションという雰囲気が強くて、主人公が二つの人格を持つことは、ミステリの鍵であることのほかには、ちょっとした切なさを添える要素という扱いでした。

一方本書は、多重人格(乖離性同一性障害)そのものが物語のテーマ。それがどういう歴史を持つ病気で、実際どういう症状があって、治療のアプローチはどのようなものになるのか、何も知らない主人公・聡子に、様々な人が語ってきかせます。

で、感涙必至というのは、主人公が、多重人格の男性と出会い、その数多い人格のひとつ(というか、ひとり?)と恋に落ちるけれど、その男性が治療を受けて回復していく最後の過程で、その人格が統合されて消えてしまうから、ということなのですね。
別に、そんな話で感動したりしないんですけど。

というか、聡子の性格がどうも共感できない…。
少なくとも最初のうちは、他人の家庭への、そして多重人格の人間への好奇心だけで行動しているところが、嫌いなのでした。

その聡子の、何とも腹立たしい行動の連続と、広志がいかに多重人格者になったかについての説明(幼児期にひどい虐待を受けたから、ということなのですが)は、読んでいて一瞬「もう読むのやめようかな」という気がするほど、何というか、不快な気持ちを起こさせました。まあ、我慢して読み進んでゆくと、話はまたちょっと違ったトーンの展開になるのですが。

精神障害というのは、どれであれ理解が難しいものだと思います――本人にも、本人以外にも。その不可解さが存分に描かれています。
楽しめたかと訊かれれば微妙なところですが、読み応えは間違いなくあったと思います。


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