本と旅とそれから 夜行観覧車/湊かなえ

本と旅とそれから

夜行観覧車/湊かなえ

暗いテーマの小説というのは基本的に好きではないのですが、本書については、「内容は好きじゃないけどそれを読むのは楽しい」みたいな感じでした。
夜行観覧車

夜行観覧車/湊かなえ(双葉文庫)

舞台は、高級住宅地といわれる「ひばりヶ丘」。西武線沿線に同名の場所があるので、最初はそこの話かと思いましたが、海辺が近いということなので、どうやら架空の場所のようです。高台にあるそのひばりヶ丘の一軒で、母親が父親を鈍器で殴って殺すという殺人事件発生。その家には三人の子供がおり、一番上の息子と下の二人は母親が違う。

その家の向かいには、ひばりヶ丘には不似合いな小さな家に、夫婦と一人娘が暮らしています。この家族の一番の特徴は、娘が手のつけられない癇癪もちだということ。親を「おまえ」呼ばわりし、ひとたびスイッチが入ると、怒鳴り、叫び、物を投げる。両親はそんな娘を前に、「なぜこんなことになったのか」と戸惑うばかり。

近所のいかにもひばりヶ丘な立派な家に暮らすのは、物見高い老婦人。夫は留守がち。自慢の息子とその嫁は海外暮らし。彼女は「高級住宅地・ひばりヶ丘」を愛し、その格式と平和を損なう者は許せない。

妻が夫を殺した家では、その夜一体何があったのか。残された子供たちはどうなったのか。

思えば、ごく狭いエリアの中での話です。
人間というのは、心が脆い生き物なのだなぁ、と、情けなくなる。そして、ついつい自己中心的になってしまうものなのだな、そして自己中心的になってしまっているということに気づかないものなのだな、と。

たまたま、これを読んだ前日に、アニメ「三月のライオン」(いつの間にか見ているのです)で、中学校でのいじめをテーマにしたエピソードをやっていました。
見た後、、眠るまでどうにもその話のことばかり考えてしまって。何ともはっきりと形容できない、いじめという行為の醜さが、その心地悪さが、なかなか頭を去りませんでした。その中で一番イヤだったのは、子供同士のことではなく、その担任の教師の態度でした。まずは大人ですよ。自分もそうだから決して大きなことは言えないけれど、面倒を避ける、事なかれ主義の大人が多すぎる。

ひばりヶ丘の住宅地でも、隣の家から叫び声がしても、関わり合いになるのを避けて、人々は窓を閉ざす。その中で最後に敢えて関わろうとした人の姿が感動的です。

些細なことが引き起こす、思い込みや見栄や遠慮。それがもたらす劣等感や過度な期待や失望や幻滅。それがさらに不満の爆発や憎しみや暴力につながる。ああ、負のエネルギーはどうしてこうも際限なく増大していくものでしょうか。

読んで心地よいものではまったくないのに、読んでいるという行為自体は楽しい。そのことについてはもやもやとした感じもありますが――。
そして最後にはちょっとだけ救いもあります。

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  1. 2017/11/19(日) 22:00:00|
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