本と旅とそれから 七つの会議/池井戸潤

本と旅とそれから

七つの会議/池井戸潤

いつも通りとても面白かったけれど、タイトルがあまりピッタリきていないような気も。
とある中堅企業・東京建電を舞台に、目標達成のプレッシャーに負けた営業マンが不正なコストカットに手を染め、その実態を明らかにしようとする人々、隠蔽しようとする人々の様子を、東京建電の親会社・ソニックを巻き込んで描いています。
「七つの会議」

七つの会議/池井戸潤(集英社文庫)

全8話から成る物語ですが、会議の数は七つ――よりもっと多いような。特にフォーカスされているものが七つなのかしら。まあいいけれど。

それなりの規模の会社の正社員といえば、身分の保証された、羨ましいばっかりの人々かと思いきや、求められるものも大きくて、やはり世の中、お金を稼ぐというのは大変なのだな、としみじみします。会社では目標未達を責められ、人前で罵倒される。さらに、家に帰れば妻としっくりいかず、心休まる場所がない、みたいなサラリーマンがたくさん登場して、「何なんだこれは、日本社会ってどっかおかしいんじゃないの!」みたいな気がしてきそう。

こんなふうに社員を追い詰めなければ、会社は生き延びていけないものなのでしょうか。
昨今の過労死をめぐるあれこれの社会問題を見ていると、組織の中で様々な形で追い詰められている人は多いようです。

もちろん、あるところまでの「厳しさ」は必要なのだろうと思うけれど。ぬるま湯的な職場じゃダメだろうということぐらいはわかりますが、人の心身の健康を損なうようなプレッシャーがかかるのはやっぱり不適切ですよね。
・・・で、また、プレッシャー耐性なんてものも、人によって違うでしょうが。才能があるか、さもなければプレッシャー耐性があるかで、社員としての能力が測られたりしたら、イヤだな~^^;。

そんな中、ちょっとホッとできて好きだったのが、この東京建電を退社するOL(死語?)さんのエピソード。社内不倫が破綻し、会社での仕事にも、早い話が「イヤ気がさして」辞めることにした優衣が、辞める前にせめて何か残そうと思い立ち、社内に無人のドーナツ販売コーナー設立を成し遂げるまでのお話です。

彼女の達成目標は「無人のドーナツ販売コーナーを作る」という程度の、一見ささやかなものですが、保守的な組織の中では、これまでなかったものを設けるというのはかなりの難事業。それまで自分から事を起こそうとしたことのなかった優衣の奮闘に、感情移入して「頑張れ!」というポジティブな気持ちが湧きます。

おそらくはそして、会社員目線で考えると、自分にプレッシャーをかけて苦しめる会社という組織から、あっさりサッパリ去って行く彼女の姿が、何とも羨ましい自由への飛翔のよう。優衣の場合、まだ20台独身という束縛のなさゆえの自由ではあります。でも、実社会での例えば電通過労死事件のように、同じ20台独身でも、自死を選んだ(というか、に追い込まれた)人もいますものね。

同じ池井戸作品でも、半沢直樹シリーズみたいに、組織にいればこその面白さを描いた作品と違って、暗い雰囲気のある小説ではありますが、でも面白かった。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 池井戸潤 
  1. 2018/03/05(月) 22:00:00|
  2. 2018
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/2002-6792a37e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する