本と旅とそれから たまゆら/あさのあつこ

本と旅とそれから

たまゆら/あさのあつこ

島清恋愛文学賞受賞作品、だとか。
しまった。本格的な恋愛小説というのは、私は苦手なんだった。
まあ、とにかく読んでしまったからには、とりあえずメモ程度にでも感想文――覚書ぐらいでも。
「たまゆら」

たまゆら/あさのあつこ(新潮文庫)

明治時代ぐらいの物語かという雰囲気を漂わせつつ、現代の物語。花粧山(かしょうざん)、という、F市(てどこでしょ)から電車でしばらく行った辺りにある山が舞台です。
この山、さほど高い山というわけでもないのですが、あまり多くの人が登る山でもなくて、途中の一軒家より上には、道らしい道もありません。

この一軒家に暮らす初老の夫婦の物語がひとつ。
そして、ある冬、雪の中をこの家にやってきた若い女性の物語がひとつ。
ふたつでひとつの物語を形作っています。

これがいずれも、凄まじいと表現したくなるような恋愛物語。
というのも、このどちらも、恋愛と殺人がセットになっているから。

老夫婦の方は、妻に離婚歴があるのですが、彼女がまだ最初の結婚をしていた頃、たまたま出遭った男性と激しい恋に落ち、それまでの夫と別れてその男性の元に走ったところ、分かれた元夫が、同居する家族を皆殺しにし、さらに女性の母親まで殺す、というとんでもない事件を引き起こします。
このくだりはちょっと横溝正史みたいです。

その後、女性とその二度めの夫は、殺人を犯した元夫が逃げ込んだという、ふるさとの花粧山にある現在の家に暮らし始め、やがて様々な理由から、この「山」と「人里」の境目にたどり着く人々と交流を持つようになります。

その暮らしぶりが、あまり現代らしくなく、テレビもないし…電話は…どうだったでしょう。

若い女性の方は、幼い頃から想いを寄せていた男性が、ある日突然、父親を刺殺して失踪してしまいます。そうなって初めて、自分がいかに彼を強く思っていたか、そしてそれを伝えずにきたことが無念だったかに気づき、彼女は彼の後を追う。そして、彼が消えた花粧山へとやって来ます。深い雪をかきわけてたどりついた、「山」への入り口に立つ初老の夫婦の家。

そして夫婦と女性は、共に山を登って行くことになります。

昨今あちこちでニュースになるストーカーというものがこれだろうかと、初老夫婦の妻の元夫の引き起こした惨事を読んで思います。
昨今も、あるいは昔も変わることなく、人間にはどうにも説明のしようがない狂気あるいは異常性が表われることがある――ただ…それが人を害する衝動であると狂気と呼ばれるけれど、人への愛着であればもしかするとそれは激しい恋愛感情と呼ばれるのかも知れません。根っこは案外近いのかも、と。

まあ…そうした激しさがどうにもかったるく思える私です。
精神的なバイタリティーが低いのかしら~。

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