本と旅とそれから 真夜中のパン屋さん5、6/大沼紀子

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真夜中のパン屋さん5、6/大沼紀子

新聞広告で、「まよパンシリーズ完結!」みたいなのを目にし、すぐに図書館に予約を入れはしたものの思いっきり待たされ、ようやく回って来たのを読みながら――何だか違和感。

むむ~!これは抜けている!と、自分のブログを確認してみれば、やはり。
最終巻のひとつ前も、まだ読んでいなかった。
そこであらためて5巻目を借りて来てみると、結構これが分厚い。何だかだと忙しく、一度に読み切れず、いったん返却してまた借りて、などあれこれやっていて、ずい分時間がかかりました。
「真夜中のパン屋さん」

真夜中のパン屋さん5、6/大沼紀子(ポプラ文庫)
 午前4時の共犯者、午前5時の朝告鳥


ここのところ、いわゆるライトノベルと言える小説を、年甲斐もなく(?)何冊も読んでいましたが、久しぶりにこの「まよパン」を手に取って、「あ、このシリーズはちょっと違う」と。文章や、リズム…のようなものが、どこかしっかりしている感じがしました。

先述の通り、今回はシリーズ最終巻を先に読んだのですが、これは短編集の形式になっており、5巻目でいったん完結したシリーズの、登場人物たちのその後が描かれております。その後というのも、数か月後、じゃなくて数年後。

たぶん――人気のシリーズ、登場人物たちそれぞれにファンがいて、あの人はその後どうなったのだろう、と気になる人が多いのだろうな…。斑目氏やソフィアさんやこだまクンや、そして希実は。でも、正直なところ、私は肝心の、ほぼほぼ主人公のこの希実にあまり思い入れがない…ような。

(この、「ほぼほぼ」って言い方、まあどこにでもあるといえばあるのですが、本シリーズでは「ほぼ」がほぼほぼ「ほぼほぼ」。何となくマイルドな感じがしてちょっと気に入りました。もしかして、若者表現なんですか?知る術とてないワタクシでございますが。)

やっぱり私のお気に入りは斑目氏ですかね。
NHKドラマでは六角精児さんが演じておられたかと。何だかイメージぴったりだ。「相棒」の鑑識さんのイメージもあるので、オタクっぽい役柄がはまるのかも知れません。
当初は犯罪者すれすれの変人、という感じだった斑目氏ですが、実は「脚本家」などというクリエイティブなことを生業とする人で、そのオタクぶりがやがて主人公たちに頼られる特技と認識されるようになります。

人柄だって、変人というよりは個性的。そこを周囲もよっくわかっていて、結果、最終巻では綺麗な奥様との間に可愛らしい娘まで生まれているという、人生大出世を果たしております。彼の良さは、私が思うには、無邪気と言ってよいほどの、打算のない友人への献身、でしょうか。友情を感じた誰かに対しては、労力も財力も惜しげもなくつぎ込む。だから、それをされた相手も、同じように彼に返そうとする。まあ、周囲の人間が善人揃いという物語設定なればこそのことでしょうけど。

さて、その後1冊戻って、シリーズ事実上の最終巻を読んだわけですが、この巻では希実とその母・律子の物語を軸に、希実の父・樹、その兄(つまり希実の伯父)・榊、そして暮林の亡妻・美和子などをメイン関係者とする、二世代にわたる物語が展開します。
その中心にある謎というのが、「樹は本当に希実の父親なのか?」というもの。

たまたま私は6巻目を先に読んでしまったため、そうでないということがわかっていましたが、6巻目には「その人物」が誰なのかがあまり明確に描かれていないので、やはりずっと、その謎は謎のまま、5巻目を最後まで読みました。

にしても、どうして物語の中の親って、子供のためにとか思って、大事なことを子供に隠そうとしますかね。大抵の悲劇やら騒動やらは、隠すから発生するように思うのですが。まあ、だから物語になるわけですが。明かしてしまえば、そこまでひた隠しにするほどのことだろうかと思うようなネタだったりするのに。で、結局バレてしまうのなら、労力の浪費って話なわけですが。
――まあ、そんな言い方をしちゃあ薄情でしょうか。

なんで希実の周囲には、こんなにいい人々ばっかりなんだか。羨ましいゾ。
当人は、高校生にして父親がいないし母親には捨てられたと言えそうな境遇ですから不幸なんでしょうけど、その不幸を補って余りある、あかの他人から寄せられる愛情の豊かさ。あり得ない。いやだから、フィクションなんだけれど。それにしても。

いつかまた、通して読み返してみたくなりそうな、愛すべきシリーズでした。


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  1. 2018/05/21(月) 05:16:38 |
  2. こみち

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