本と旅とそれから ぼくのメジャースプーン/辻村深月

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ぼくのメジャースプーン/辻村深月

辻村深月さん、3作目。
1作読めばそれだけ好きになる、という感覚です。

主観的に「好きな作品だなー」というのとはまた別に、「何て力作だろう」と冷めた頭で感心させられる小説でもありました。
「ぼくのメジャースプーン」

ぼくのメジャースプーン/辻村深月(講談社文庫)

まず、この物語設定がユニーク。

主人公は少年・ぼく。ん?名前は出てきたかな?きてたかもしれませんが、印象に残っていません。初出は小学校2年生で、その後4年生になります。
このぼくには特殊能力があります。これが少々複雑なのですが、誰かに対して本気で、「おまえは○○しろ。さもなければ××な目に遭う」と囁くと、それが現実のこととなる、というもの。つまり、○○という条件を提示し、それを全うしない場合の××という罰を提示すると、相手が無条件にそれに従って行動する、という特殊能力なのですね。

彼が自分のその能力に初めて気づいたのは、小学2年生の時。同級生の女の子ふみちゃんのピアノの発表会に招待されて行ったときのことでした。天才的に上手な子のすぐ後に発表すると、自分の演奏が見劣りするから弾きたくない、と嫌がるふみちゃんに対し、そうとは知らず「ちゃんと発表しないと一生後悔することになるよ」と語りかけ、ふみちゃんがそれに従ったことで、母親から自分の特殊能力を知らされるのでした。

やがて、彼とふみちゃんの通う学校を悲劇が襲います。
学校で子供たちが飼育していたウサギを、常軌を逸した若者が惨殺する、という事件が起きるのです。その日、本当なら当番で朝早くウサギ小屋に行くはずだったぼくは、たまたま風邪気味で、ふみちゃんに当番を替わってもらいます。そしてその朝、ふみちゃんは耳や手足を切断され無残に殺されたウサギたちを目にすることになり、重いPTSDで、他人とコミュニケーションを取ることも、学校に通うこともできなくなってしまうのです。

やがてその犯人は捕まりますが、何カ月経っても、ぼくの大切な友人であるふみちゃんは、苦しみの中から抜け出せないまま…。

そしてぼくは、自分の力を犯人の青年に対して使うことを考え始めます。
その頃、ぼくの力を心配した母親が、同じ能力を持つ親戚の「秋山先生」に、ぼくを導いてくれるようにと依頼します。秋山先生は大学の先生で、とても穏やかで知的な人物です。

物語の後半のほとんどは、ぼくと秋山先生が、二人の共有するこの特殊な能力について語り合う場面です。少々理屈っぽすぎるかな、と思うこともありますが、二人が大きな年齢差を超えて、自分たちの持つ特殊な能力について様々に考えを語る姿を通して、彼らがいかに誠実な人間であるかが伝わります。

そして、ぼくにとって、幼馴染のふみちゃんがどれほど大切な存在であるか、また、ぼくが幼いながらに、どれほど責任感の強い、真っすぐで愛すべき少年であるかが描かれます。
この主人公の少年の、その純粋さ、誠実さには、秋山先生ならずとも、彼を抱きしめ、「今、小さなあなたが一人きりで責任を感じて泣くことは何もないんですよ」と語りかけたくなります。

ぼくは、事件のあった朝、自分が当番を替わって欲しいと頼んだばっかりに、大好きなふみちゃんが惨劇の場面に遭遇し、言葉を喋ることも何もかもできなくなるような目に遭ってしまったそのことに、とてつもない責任を感じていたのです…。

物語のクライマックスは、ウサギを惨殺した犯人の青年と、ぼくが対面する場面です。
ぼくと秋山先生は、犯人に対して特殊能力を使うことについて何日も話し合います。そもそも使うべきなのか。使うとすれば、どんな言葉にすべきか。
同じ能力を持つ先輩として、秋山先生も真っ向からぼくに向き合い、真剣に話し合う。
やがて、ぼくはひとつの結論を出し、秋山先生も同意する。そして――。

それにしても、この主人公・ぼくは、何と知的レベルの高い人間なのでしょう。
まだ小学4年生ですよ!平易な言葉を使ってくれているとはいえ、大学教授である秋山先生と、彼は対等に意見を交わします。それでいて、子供らしい、まだまだ自分自身を扱いかねる面もあって、大人として先輩としてそれをサポートしようと力を尽くす秋山先生とのやりとりが感動的です。

うぅむ、何者なのだ、辻村深月さん。
何をどうすれば、こんな不思議な物語設定を思いついて、しかも、それをこれほど感動的な物語に、しかもさりげなく、作り上げることができるのか。

全作品読みたい!と、三浦しをんさん以来久々にそんな気持ちにさせられています。


webcitron01.gif


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  1. 2018/03/12(月) 22:00:00|
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コメント

LMくんはいつもより足早の京都の桜を見に行くことができてるんだろうかと思い、「本と旅…」を訪ねてみたらアナタ、いつも通りのすごい読書量じゃないですか!そして、読んでいる本が全くかぶっていないのもいつも通り(^^)。この辻村深月氏もまだ読んだことがないわ~。無意識に同じ作家さんの作品ばかりに偏ってしまうけど、本作から辻村深月氏も読んでみようと思ったよ。
  1. 2018/03/27(火) 09:35:50 |
  2. URL |
  3. しの #2nAugjbc
  4. [ 編集 ]

しのちゃん、

お久しぶり!コメントありがとう^^。

いや、京都、まだ行けてなくて。
ちょうど1年前くらいからちょっと体調不良で、昨秋も紅葉を逃してしまったのよー。
この春は花見に行くつもりではいるんだけど、もう花が残っているとしたら吉野山奥千本ぐらいじゃないかって頃行くのだわ――それに、今回は奈良だし。

辻村深月さん、今ハマってます。
でも、目下ただ今は、恩田陸さんの超話題作がようやく図書館から回ってきたのでそちらを読んでいるのだけど。これがまた面白くて。
  1. 2018/03/27(火) 21:09:52 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

今年の桜は駆け足だから、何とか奈良の奥地(?)で桜に出会えるといいね。そのころには、体調も旅行に耐えられるくらいに戻ってるといいんだけど。(だって、厳選して持って行ってもカメラ関係が重いでしょ。)

恩田陸さん!ちょっとご無沙汰してるわー。
私は西加奈子さんと原田マハさんかな、最近読みだしたのは。小説とは別に、「あんこの本」なるものを買ってしまい(姜 尚美著)、あんこの妄想が止まらない今日この頃です。
  1. 2018/03/29(木) 00:42:06 |
  2. URL |
  3. しの #x7ZRWLig
  4. [ 編集 ]

しのちゃん、

体調の方はまったく期待が持てないけれど、奈良の奥地(?)の桜には望みをかけてマス。っても、出かけるのはまだまだ先なんだけど(T_T)。
実はカメラは、体調を考えて、昨年末に軽いモデルに買い替えたの。でも、買ったきり箱も開けてなかったのを、先日ようやく出してみたって体たらくなのだけど。

西加奈子さん、原田マハさん、どちらも気にはなっているけれど読んだことありません。いつか何かきっかけがあったらトライしてみたいな。
  1. 2018/03/30(金) 20:52:26 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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