本と旅とそれから 天山の巫女ソニン 巨山外伝、江南外伝/菅野雪虫

本と旅とそれから

天山の巫女ソニン 巨山外伝、江南外伝/菅野雪虫

本編5冊は、他所の図書館からわざわざ貸してもらった文庫版で読みましたが、外伝についてもそれでリクエストを出したところ、図書館から電話が来て「講談社に問い合わせたのですが、外伝は、当面文庫化の予定がないということで…」。

をを、お手数をおかけしました。
というわけで、外伝2冊は児童書版で読みました。といっても、あまり児童書児童書した装丁ではありませんでしが。
天山の巫女ソニン 外伝

天山の巫女ソニン 
 巨山外伝・予言の娘
 江南外伝・海竜の子
  /菅野雪虫 講談社


このシリーズは、「半島」にある三つの国、北の巨山(こざん)、中部の沙維(さい)、南部の江南(かんなむ)を舞台に展開し、主人公ソニンとその主・イウォル王子は沙維の人間なのですが、この2冊の外伝では、物語の第2、第3の主要人物、巨山のイェラ王女、江南のクワン王子がそれぞれ主人公。いずれも、本編で主人公と出遭う前の、彼らの生い立ちが描かれています。

面白かった――といっても、それぞれ200ページ程度の物語で、あっという間に読めてしまうので、物足りないといえばそうですが、そもそも本編からしてかなり物足りないのでそこは仕方のないところ。

「忖度」なる言葉がマスコミで頻繁に聞かれる昨今、江南の王宮の政治の動きが、まさにこの忖度に基づいている(その単語は記されていませんが)様子が、ちょっと不気味。上の者が「こうしろ」と命令しなくても、その望むところをやんわり示唆するだけで、いえ、それすらしなくても、周囲がそれを忖度し、実現しようと奔走する。並外れた権力は、ただ存在するだけで周囲の者を動かす。人間には、そういう残念な一面が、本質的にあるものなのでしょうか。

大河ファンタジーの一要件として、登場人物の数がとても多くて、物語が多層で広がりがあって、というようなのがあるかと思いますが、その点、本シリーズはメインの登場人物が片手で足りてしまうほどしかいないので、やっぱり大河じゃないのかしら。どこまでも広がって、どこまでも続きそうな大長編が大好きな私には残念なことではあります。

でも、どこまでも続きそうでいて、でもしっかり結末がある物語が好きなんです。
作者の筆の進むまま、みたいにどんどん展開していって、「いったいこれほど広がった物語は、どう収束するのだろう」と思っているうちに作者が書くのをやめてしまったり、死んでしまったり(まあ、こちらの方は作者本人に罪はないものの)というのは、どうにも納得いきません。

その意味では、ある程度のところで物語に「終」を記したシリーズは、それはそれなりによいのかも知れません。

外伝では、本編でざっと紹介されていたイェラとクワンの過去が詳しく語られていて――まあ、それだけではあります。でもきっと、作者としてはこれで本当に物語の中途半端だった部分に結末をつけたということなのでしょう。

小さくまとまってはいたものの、「珠玉」と形容できる物語だったと思います。


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