本と旅とそれから 蜜蜂と遠雷/恩田陸

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蜜蜂と遠雷/恩田陸

名作にして力作~~(T_T)。
音楽をここまで文字で描くなんて、それだけですごい。

昨年、直木賞と本屋大賞をダブル受賞し、当然大変話題となり、図書館に予約を入れたものの、すごい数の予約待ちとなり、予約を入れたことをほぼ忘れた頃にやっと回って来た本書。
(ちょっとだけですがネタバレありますので、ご注意。)
蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷/恩田陸(幻冬舎)
感動的だし、作品自体とは別に「作家ってすごい」と、本書でも思いました。
そういう作品とちょくちょく遭遇します。描かれるテーマについてははおそらく門外漢でしょうに、どれほど膨大かは想像もできない取材作業の末に、緻密で豊かな世界を紡ぎ上げる。あー、ホント、超一流のプロの仕事って素晴らしい。

二段組で500ページ超の大長編なのですが、まったく飽きません。そして、1冊がまるまる、あるひとつの国際音楽コンクールのお話です。それ以外はナシ。
このコンクールに参加した4人の若者たちの物語。海外在住だったり、「日系」だったりはしますが、いずれも日本語でコミュニケーションを取れるピアニストたちで、紛れもない天才ぞろい。

私レベルの目線からだと、芸術を志す人々というのは「天才」かそれ以外に分けられるものだと思うのですが、本書のメインキャラたちを見ていると、それはどうやら「すごい天才」かそれ以外の天才、あるいは「天才」の中にもその天才度合に程度差があるらしいと思われます。

4人のメインキャラのうち3人は、コンクールを通じて仲良しになり、中でもうち2人は、実は子供の頃にすでに出遭っていた幼馴染の再会となります。彼ら3人はそのいずれもが甲乙つけ難い、輝く才能の持ち主。「並みの天才」が、演奏を前に緊張に絞めつけられたりテクニックの追求に汲々とするのと違い、「抜群の天才」である彼らの世界には、音楽の幸せしかないように見えます。

そんな天才たちの演奏を耳にして、歓喜に包まれる聴衆。

・・・うん、その歓喜は私もかつて経験したことあるゾ!
懐かしい感覚だったので、何とか探し出したコンサートの半券をもとにググってみましたらば、それは2002年のPMFオーケストラのコンサートだったことがわかりました。
部屋の押し入れの奥を探せば、当時のパンフとか埋もれているはずなのですけど。

マルタ・アルゲリッチさんのピアノ、シャルル・デュトワさんの指揮で、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番でした。サントリーホールにて。
もう16年も前のことになるのか。それでもまだ、昨日のことのように――とまではいえないけど、2、3年前のことのように思い出します。

聴いている間中、座席から体がちょっと浮き上がっているんじゃないかと思われるような興奮。終わったあとの休憩時間中、あっちでもこっちでも「おい、すごい演奏だったね!」と目をキラキラさせながら語り合う聴衆。
プロコフィエフの3番は、別のコンサートで別のピアニストの演奏(名前は忘れたけれど、その人だって有名ピアニスト)を聴いたこともあったのですが、ぜんっぜん違いました。私ですらはっきり違いがわかったくらい、まったく別モノでした。

まさに、一生忘れられない体験。
満員の聴衆にそんな感動を伝えることのできる芸術家って。
・・・そんな才能に恵まれた若者たちの物語。

第1、2、3次の予選をくぐり抜けて本選でコンチェルトを演奏する。そこまでのプロセスや舞台外での物語が丁寧に描かれながら、最後の優勝者や順位の発表シーンはなく、でも最終結果はちゃんと読者に知らされます。ああ、あの人が優勝したのか。ああ、彼(女)らの順位はああなったのか。それを知っても、でも、別にそれはあまり重要なことではなく思えるような。「音楽」という素晴らしいものを生きることのできる彼らにとって、もうそれ以上何も要らないんじゃないか――そんな気持ちになります。

4人のメインキャラの中の、友達同士ではない1人、あとの3人よりはちょっと年上(コンクールに年齢制限があって、そのぎりぎり)の、すでに一度音楽のプロとなることを諦めて会社員になっていたという人物がいて、この人は素晴らしい演奏をするものの、残念ながら予選途中で落ちてしまうのですが、彼が最後に奨励賞と作曲家特別賞を受賞するのが、読んでいてとても嬉しい。

彼が、コンクールを通じてもう一度音楽の喜び、音楽家として生きる希望を見出す様子が、無性に嬉しくて、胸に迫ります。

ピアノコンクールの物語としては(自分のブログを探してみたわけです)、中山七里さんの「いつまでもショパン」(2014年。感想文は►コチラ)とか、コンクールじゃないけれどやはりピアノ音楽の素晴らしさを題材にした、昨年読んだ宮下奈都さんの「羊と鋼の森」(2017年。►コチラ)などをこれまでに読みましたが、どちらも感動作でした。音楽という別形態の芸術を小説に著すって、本当に、書き手に相当の力量がなければ読み応えあるものはできないだろうと思うのです。

登場人物たちの伝えてくれた音楽の喜びにありがとう、そしてふと我に返って、ああ、これは恩田さんの創り出した物語だったのだな、恩田さんありがとう、と、そんな気持ちが溢れる1冊でした。

うーん、死ぬまでにもう1度くらい、クラシック音楽に浸る時があるといいなぁ。
・・・とか。

webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

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  1. 2018/05/03(木) 22:00:00|
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