本と旅とそれから フォルトゥナの瞳/百田尚樹

本と旅とそれから

フォルトゥナの瞳/百田尚樹

作家さんの名前で借りてきた1冊。まず間違いなく面白く読めるでしょう、と。

予想に違わず、面白かった。以前読んだ、同じ百田さんの「プリズム」(感想文は►コチラ)と、物語の雰囲気がよく似ているように思いました。主人公があれこれ思い悩みながら話が進んでいく、というところが。
フォルトゥナの瞳
フォルトゥナの瞳/百田尚樹(新潮文庫)

物語のモチーフは、「人の余命が見える目」。
死期の迫った人の体が透けて見えるというのです。すごく近ければほぼ透明人間で、身につけた服やお化粧などだけが見える。そこまで近くなければ、手の指が透けて見える――たぶん足の指も透けているのでしょうが、靴を履いているとわからないのですね。
主人公はある日突然、自分にそんな目が備わっていることに気づき、激しく動揺します。

つくづく真面目な人物。
私が突然そんな目を持つことになったらどうするか、なんて想像もつかないけれど、親しい人ならともかく、あかの他人についてとなれば、どうしようもないと思うしか…。悪知恵があれば、それで何かお金を儲ける手段を思い付いたりするのかも知れませんけどね。

この、人の余命がわかる、という話って、怪談に見かけるんじゃなかったですか。ちょっと前に、「落語・ザ・ムービー」に何かそんな話をやっていたっけ――そう、死神の姿が見えるっていうのだったかな。

物語によって様々なバージョンがあると思いますが、大抵の話に共通なのが、人の死期がわかっても、それを変えようとすると大きな代償(大抵は変えようとした人物自身の命)を支払わねばならない、ということ。
本書にもそれは当てはまります。

主人公が誰かの死を回避させようと策を講じると、それによって主人公の健康にダメージが与えられるというのです。1回であの世に行くことになりはしないのですが、少しずつ、血管などが損なわれていく。実際、主人公も、何人かを助けた時点で狭心症を患うことになります。

そんな時、主人公は、自分の生活圏内に、近々死ぬ運命にある人が急に増えたことに気付く。これはきっと大がかりな事故か何かに違いない。主人公はその可能性について調べ、おそらくはある通勤列車の事故であろうということを突き止めます。
主人公が何かちょっとした働きかけをすれば、事故は防げる可能性がある。でも、もしそれをすれば、一度に大勢の命を助けることになり、おそらく自分の健康は大きく損なわれて、死に至るだろう。――主人公は悩みます。

しかも、ちょうどその頃主人公には素敵な恋人ができるのです。彼女と、真面目に穏やかに幸せに生きていきたい。そのような望みは決して身に過ぎたものではないはず。それなら、他人の命を救わなければならない義務も責任も、主人公にはない…のです、が。

病気による死は別でしょうが、事故死は、ほんのちょっとしたことで遭遇もすれば回避もできる。もう何年も前になりますが、どこかで岩盤崩落事故があって、何台かの車が巻き込まれ、多くの人が亡くなりました。その中の一台が路線バスでした。事故現場の前の停留所で降りた客は助かったわけです。ですが同時にその客は、自分が降りるためにその停留所にバスを停めたせいで、そのバスが事故の瞬間にその現場を通ることにさせてしまったのです。

その客はその後どんな気持ちで生きていくのだろうかと、当時思ったものでした。その人物に何の責任もないのは誰の目にも明らかですが、それでもその人はきっと何か大きなものを背負ってその後の人生を生きていったのではないでしょうか。

そんなふうな生死が、案外あちこちにあるのかも。震災についての報道などに接するたび、そう思えます。
明日何が自分の身にふりかかるか、わからないから今日を穏やかに過ごせる。そういうものですよね。

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  1. 2018/05/05(土) 22:00:00|
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「フォルトゥナの瞳」百田尚樹

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コメント

2日ほどで読み終えてしまうほど、一気に読破してしまいました。
面白い展開と予想できない内容で、とてもよかったです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
  1. 2018/05/11(金) 11:36:30 |
  2. URL |
  3. 藍色 #-
  4. [ 編集 ]

藍色さん、

主人公、真面目な人というか善人というか、きちんとした人だったせいで、苦しい人生になってしまってお気の毒な感じでした。
TBありがとうございます。
こちらからも送らせて頂きます。
  1. 2018/05/12(土) 19:38:41 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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