本と旅とそれから ツナグ/辻村深月

本と旅とそれから

ツナグ/辻村深月

先日本屋大賞を受賞されて、これまでにも増して人気も注目度も高まっている辻村深月さん。どうなのかしら、うちの図書館でもこれを機にどんどん辻村作品を充実させてくれるのかしら。それならもちろん大変嬉しいのですが。
ツナグ
ツナグ/辻村深月(新潮文庫)

作家さんの力作をを読むといつも「プロってすごい~」と思いますが、例えば山崎豊子作品なら「取材力特にすごい」と思うし、宮部みゆきさんだと「文章力特にすごい」と思います。辻村作品を読んでいると「着想が特にすごい」と思うのです。

「ぼくのメジャースプーン」(感想文は►コチラ)のときも思いました。いったいどこからこういうストーリーを思い付くのかしら、と。

「ツナグ」というタイトルにもなっている言葉に、小説の中では「使者」という漢字を当てています。「つなぐ」という言葉は動詞なので、「使者」という名詞の読みとするにはちょっと違和感があるのですが…。

この「使者・ツナグ」に頼むと、すでに亡くなった人にひと晩だけ再会することができます。
・・・最近、様々な形の「死」を扱った物語に遭遇することが増えた――ような。まあ、私が無意識のうちにそのような物語を選んでいるのかも知れないけれど。

本書には、「使者」に死者との再会を依頼した人々の物語がオムニバス形式で収められています。オムニバスといっても、使者の存在はすべてに共通。

「メジャースプーン」でもそうだったのですが、鍵となる特殊能力というか特殊現象には、少々込み入ったルールがあります。この物語の場合、ひとりの人間が死者との再会を頼めるのは一生に一回のみ。一度誰かと再会させてもらったら、二度と依頼はできません。一方ですでに亡くなっている死者の方でも、再会の依頼に応じるかどうかは選ぶことができます。再会したくなければ断ることもできる。そして彼らの方でも、再会のチャンスは一度のみ。一度依頼に応じたら、もう二度目はありません。

そのようなチャンスが本当にあるとしたら、人は誰に会いたいと依頼するでしょう。もちろんいろいろでしょうけど、大抵は近しい人でしょうね。親とか。もし子供に先立たれていたらその子供とか。

そのケースもありますが、本書にあるユニークな例は、アイドルと親友と「自分を騙したかも知れない、そして死んでいるかいないかわからない(昔の)恋人」。死者に再会することで、明らかになる謎もある。

・・・でも、たとえたった1回だけでも、もし本当に死者と再会できるとしたら、それはきっと大きな心の慰めになるのではないでしょうか。
と、思えるのは、目下のところ私に何としても死者に確かめたり尋ねたりしなければならない事がないからかも知れません。あるいは、死者に伝え損なったことが、今のところないから、かも。だから、ただただ、もし自分より先に亡くなった人にもう一度会いたくてたまらなくなったとき、会うことができると思うだけで、安心できると思うのではないでしょうか。

それはとても普通なのかも。そして普通の人は、「もう一度会いたくてたまらない」という思いを抱いたままずっと生きて、特殊能力を持った人に頼ることなく、あちらで、普通に再会を果たすのかも知れません。

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  1. 2018/05/15(火) 22:00:00|
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