本と旅とそれから 子どもたちは夜と遊ぶ/辻村深月

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子どもたちは夜と遊ぶ/辻村深月

上下二巻の長編。最近マイブーム(もしかして古い表現でしょうか…)の辻村深月さんです。

好き嫌いを言うなら、これまで読んだ辻村作品の中ではちょっと「好き」度合が低いでしょうか。その理由は、殺人のシーンがかなり多く、それがかなり生々しいから。行為としてグロテスクであることに加え、そこに至るまでの殺人者の心理状態が、読んでいて息苦しくなるような、迫真の描写なのです。

なお、本書はミステリとしての要素も強いし、そもそも謎だらけの小説なので、これ以降はネタバレになってしまうかと思います、念のため。
子供たちは夜と遊ぶ

子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)/辻村深月(講談社文庫)

主人公は――殺人者。彼・浅葱(あさぎ)は幼い頃、双子の兄・藍(あい)と行き別れ、虐待の横行する悲惨な施設で成長します。それでも彼は美しく、頭もよく、それなりに友人もいる、なかなかステキな大学生になりました。
でも、彼の精神には空白があり、それを埋めることができるのは、かつて、彼を虐待する母親を殺して彼を守ってくれた兄だけ。そんなある日、PCの向こうに藍が現れ、呼びかけてくる――人を殺すゲームをしよう、と。

浅葱の友人の狐塚(こづか)という大学生も準主人公といえるし、女子大生・月子などもかなり重要な登場人物。月子のゼミ担当の秋山教授は、「ぼくのメジャースプーン」(感想文は►コチラ)に登場する秋山先生です。

物語は謎に満ち満ちています。藍とは何者なのか。というか、浅葱に語りかけてくる謎の人物は、本当に彼の双子の兄・藍なのか。

辻村作品は、カギとなる人物設定がいつも独特で、それがあってこその物語という感じがするのですが、本書については、その目新しさ、辻村作品独自のユニークさがちょっと弱かったと思います。

作品を通じて、最終盤までいくつかの謎が残され、中には、それが謎であることさえ触れられずに最後にどんでん返しのように明かされたりする事実もあります。
が、最大の、「藍は何者?」という謎については、途中からうっすら推測されてきます。…推測されるように描かれているのかも知れないし、その要素が比較的他の小説やTVドラマなどで取り上げられているものに近いからかも知れません。

さらに言うと、一番最後の最後のアレは――、一体何だったのでしょう。その部分だけ、謎が残ったというかわけがわからなかったというか…。

浅葱の生い立ちが哀れです。25年ほどの人生のうち、完全に自由だったのは大学に入ってからの6、7年ぐらいなのかな、その前の3年ほどは、自由になるための労働の年月、そしてそれまでの幼少期は孤独と虐待に塗りつぶされていた――。

児童養護施設のような場所で、責任者たる大人がその責任を放棄したり、ましてや立場を利用して子供を虐待するようなことがあったら、もうそこは、文字通りこの世の地獄ですね…。そんなところで何年も過ごすことを強いられた幼い者たちが、精神に歪みや傷を生じたとしてもそれは当然ともいえます。そうした精神が犯罪を犯した場合、その罪をどうとらえたらよいのでしょうか。

現実世界にも、これまでにそんな事件があった記憶が。
それが傷害や殺人事件につながり、被害者が出たとき、その罪をどうとらえたらよいのか。被害者の側から見たら、加害者の生い立ちが悲惨だったからという理由で、罪を許す気になれなくても、それもまた当然といえるでしょう…。

とても面白い物語だったけれど、終盤の解決編が少々込み入りすぎて興醒めの感があったようにも思います。謎が残るということもありますが、読後感がちょっと――浅葱の精神を救ってあげることはできなかったのか、誰かほかに悪い者がいるんじゃないのか。でも、それを探そうとすると、真の悪者は人間じゃなくて悪魔なんじゃないのか。
――そんなやるせない、無力感が残りました。


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  1. 2018/08/12(日) 22:00:00|
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