本と旅とそれから 沈黙の町で/奥田英朗

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沈黙の町で/奥田英朗

すごく読み応えのある1冊でした。
奥田英朗さんというといまだに、直木賞受賞作の「イン・ザ・プール」の3部昨(感想文►コチラ)が真っ先に頭に浮かび、ちょっとふざけた――というか、ユーモア小説のようなイメージがわきますが、「オリンピックの身代金」(感想文►コチラ)などは、本作同様、硬派な作風の読んで充実感のある作品でした。
沈黙の町で
沈黙の町で/奥田英朗(朝日文庫)

ただ、本書は、扱われている題材が暗いものだったので、読後の爽快感のようなものはありません。
――とある地方都市の中学校で起きた、生徒の死亡事件。

自殺なの事故なのか。さすがに「他殺・殺人」という話にはならないのですが、自殺だとすればそれが「いじめ」によるものなのか。
その死を巡る真相が、物語のひとつの大きな要素。亡くなった生徒と親交が深かったと見られる4人の生徒たち、その親たち、教師、警察関係者――亡くなった生徒が語ることはないので、こうした生きている人々の言葉や内面描写が少しずつ描かれ、真相に近づいていきます。

最後の最後を読むと、まあ一応、「何があったのか」という事実は把握できますが、何とも言えないもやもやとした感覚が晴れることはありません。

「いじめ」に関連した事件、それを扱った物語に触れることの多い昨今。現実の事件については、報道されることも表面的なので大してわかりませんが、物語となるとその深さ、複雑さには驚かされることもしばしばです。単に、いじめる者=加害者、いじめられる者=被害者という構図には収まりきらない。

そこに明らかな犯罪行為があったり(金銭を脅し取るとか)、ましてやいじめられた者が自殺したりすると、現実でも虚構でももう単純な「いじめる者=悪者」という枠がはめられてしまいますが、状況はそれほど簡単に消化できるものではないのかも知れません。

もしかするとこれはタブー表現なのかも知れないけれど、「いじめられる者にもいじめられる理由がある」。

そして、本書もそうですが、中学生という年代の子供たちの難しさ。
かつて、教員をしている知人が、中学生には、小学生にも高校生にもない難しさがあると言っていたことを思い出します。作中にもそうしたことが語られる部分がありました。

そして、はるか昔の、自分の子供時代を振り返ってみても(私の場合は小学校高学年の話になりますが)、そういえばそんな難しさはあったな、と思い当たることがあるにはあります。
身体的な成長に大きな差が出る頃でもあるんですよね。早めに大きくなる子(特に男の子)と、遅めの子の差がとても大きく出る頃ですし。

そして、心理的にも、大人の物差しでは測りきれない不可思議な考えが支配する年代でもある…のだと思います。

さらに、母親たち。もう、子供のこととなると理性はどこかにいってしまう。
――私には語れないことですが^^;。
ただ、その理性を超越して子供のことに夢中になるという存在であるからこそ、子供にとって母親とは、はかり知れない価値を持つ存在なのでしょう。

ひとりの少年の死という、最近のミステリとか警察小説としては地味ともいえる事件ひとつを巡って展開する物語ですが、少しも飽きさせることなく、暗いテーマであるにもかかわらず、物語にひきこまれる楽しさすら感じさせる1冊でした。

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