本と旅とそれから 弥栄の烏/阿部智里

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弥栄の烏/阿部智里

シリーズ完結編。全6巻ですね。
シリーズ後半は、1冊ごとに図書館の順番待ちが何カ月かあって、一気に読むというわけにはいかなかったのが少し残念でしたが、でも、面白いシリーズでした。
「弥栄の烏」

弥栄の烏/阿部智里(文藝春秋)

物語世界の設定がかなり複雑で、それについての説明になる部分が多少退屈だったとも思いますが、まあ、ファンタジーってどれもそういうものかも知れません。本当は、まずは退屈さを感じながらも読んで物語世界について理解し、2度読んで今度は物語そのものを堪能する、というのが正しい(?)楽しみ方なのかも知れません。

思い返せば、私にとっては「指輪物語」もそうでした。初めて読んだときは「何だかムツカシイ」という感じがして、かなりすっ飛ばしながら読んだ気がします。特に後半。本当にハマったのは2回目以降で、その後英語版に移ったりもして、もう何度読んだことか。でも、最初から夢中になったという人もいましたけど――その誰もが、とても頭のよい知人でしたっけ^^;。

3巻目ぐらいまでは、純粋に別世界を舞台にした物語だと思っていたこの物語、やがて、人間の住む「現実」の世界も存在する造りになっていることが明らかになって以降、話は複雑さを増し、登場人物たちの口を借りた「世界の説明」部分には、聞き覚えのある話も出てきます。最終巻にはとうとう、葵祭とか上賀茂・下鴨神社も出てきました。

でも――あのくだりって必要だったのかなぁ…?確かに、少々退屈でも難しくても細かくても、そうした「説明」の部分が物語の厚みを増す効果があるのはわかるのですが。読み返すのが何度目かになったとき、「これまではすっ飛ばしてきたけど、読んでみようか」と思って読むと興味深かったりするものなんでしょうけど。

このシリーズも、最後に「滅び」への道が示されるという点では、「指輪物語」に通じるものがあるとも言えます。最後まで読んで、何となく悲しい、寂しい思いが残ります。大人向けのファンタジーはそういうのが多いかな…。明るい一方の物語は、大人には現実離れしたものに感じられて白々しく思えてしまうのかも。

人気筆頭キャラであるに違いない雪哉が、最終巻の本書では、微妙な役どころです。共感・・・というか、応援できるような、ちょっと躊躇してしまうような。ものすごく、人間(まあ烏なわけですが)の本音を前面に押し出した言動をとるんですよね――戦争という場において。

つまり、敵にまったく情けをかけない。それはもちろん、自分たちを守るためなのですが。敵の子供に情けをかければ、やがてその子が大人になって、自分たちを殺しに来る。だから、今、殺せ、という具合に。確かに、平清盛はそれで源頼朝に一族を滅ぼされたのだけれど。
将来犯罪を犯す可能性がどれほど高くても、今の段階で無実であれば、その人物を罪に問うことのできない現代社会においては、頭では理解できても許されない理論なのですが。
それにたぶん、キリスト教圏じゃダメでしょうね。

自分の部下の兵たちに、考えて思い悩む必要はない、自分が責めを追うから皆殺しにしろ、と命じる雪哉の姿に、いくら彼が内面でどれほどの葛藤を抱えているのだろうと推察した上でも、素直に共感することは難しい。
だから、戦争という状況を作り出してしまった段階で、当事者たちは負けなのです。そうなってしまったら、もう後は、行くところまで行かなくては、状況は止まらない。

シリーズ最初の2冊もそうでしたが、最後の2冊も、本書と、前巻「玉依姫」で、同じ時間軸で展開する物語を、サイドを変えて描くという手法が取られていました。興味深い手法です。
いつか、また読み返してみたい物語です。

webcitron01.gif


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