本と旅とそれから 架空通貨/池井戸潤

本と旅とそれから

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tag: 
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

架空通貨/池井戸潤

池井戸さんの、本作はデビュー2作目なのだとか。
デビュー作は「果つる底なき」(感想文は►コチラ)。比較すると、本作はかなり重厚な作品になっていると思います。巻末解説によると、じっくり時間をかけて、何度も大幅な書き直しを経て出来上がった作品なのだそうです。
「架空通貨」
架空通貨/池井戸潤(講談社文庫)

本作と比べ、もっと長編で、シリーズものとして長く続いている作品など、その後いろいろ発表しておられる池井戸さんですが、1冊完結で、ここまで重厚な作品は…すぐには思い浮かびません。これが2作目ってすごいなぁ。いわゆる「2作目のジンクス(新人作家がデビュー作で話題になったあと、2作目が書けなかったりガッカリ作だったりすること…かな)」に立ち向かうべく、全力で取り組まれた結果、ということでもあるようです。

主人公は、かつて商社で信用調査業務を専門にしていた辛島。あれこれあって商社を去り、現在は高校の社会科教師です。その彼の生徒のひとり・麻紀がある夜、突然を彼を訪ねて来ます。聞けば、彼女の父親が経営する会社が不渡りを出し、倒産寸前だとか。会社の保有する大口の社債が期前償還してもらえれば何とか倒産は免れるのだが…。
前職のノウハウがあるので麻紀の話を聞き、たまたま夏休みで時間が作れたこともあって、その社債の発行元・田神亜鉛の本社を訪ねることになった辛島は、田神亜鉛の企業城下町である田神町の異様な経済状況を目にすることになります。

その後いろいろありまして。細かく書き始めたらずい分長くなってしまいそうな、物語はかなり複雑なものです。タイトルの「架空通貨」は、田神亜鉛が発行している「振興券」という名称のいわば私製通貨で、その通称は田神札。発行から5年後には利子を付けて田神亜鉛が買い戻す、という約束で、田神町だけで流通しているものなのですが、これがどうにも胡散臭い。そんなものは受け取りたくないと思う地元企業も、田神亜鉛との取引がなければ商売が成り立たない立場にあるので、仕方なく引き受ける。そして、今度は自分の下請け企業に強制的にそれを回す。それが繰り返された結果、田神札は、町で一番力の弱い零細企業や個人商店に積み上がっていく――。

巻末解説の筆者も書かれていますが、この田神町という町の描写が、ラヴクラフトの描くホラー小説の舞台の町を連想させます。といっても、私がラヴクラフト読んだのはもう大昔なので、何となくの雰囲気で語っていますが。
どこがどうとは言えないんだけど、何だかこの町はおかしい。何かが潜んでいる気がする。落ち着かない。そんな不気味な何かが漂う町。

問題の田神亜鉛という企業は、いったい何を隠しているのか。社長の安房(あぼう)という人物は何を企んでいるのか。そしてもうひとりミステリアスな人物として、加賀という女性が登場します。田神亜鉛のコンサルタントなのですが、この女性も、何かを隠していることは明白。彼女は何者?何を企んでいるの?

このほか、田神町の地元中小企業の社長とか、地元地銀の銀行員とか、辛島の強力な味方である帝国インフォスという情報サービス会社(帝国データバンクがモデルなのかな?)の調査員とか、かなりの数の人間が登場し、物語はとても複雑な経済小説となっています。

池井戸作品は大抵が、池井戸さんご自身の、銀行員&コンサルタントとしての知識が存分に活用された物語ですが、本作もしかり。

ただ、本作についてひとつ、ものすごく非現実的だなと思うのが、主人公・辛島と、教え子・麻紀の関係。どこの高校に、教え子の父親が経営する会社の問題にここまで深入りする教師がいますかー^^;。ありえない。
たまたま夏休みで時間はあったといっても…あ、もしかして、そこのところを考えて、主人公を学校の教師にしたのかしら。

もちろん、こういった主人公の「ありえない情熱の傾け方」に突っ込みを入れていたらフィクションは成り立たないのかな、とも思いますが。

最近の池井戸作品は、半沢直樹や「下町ロケット」の社長のように、胸のすく活躍を見せるヒーロー・ヒロインの姿が快感というものも多いけれど、本作についてはそれはありません。ただ、もうひとつの池井戸作品の特徴である、経済的な要素は縦横に駆使されていて、読み応えがあります。ただ、そうした経済的な話が好きじゃない、という人には、地味に思えるかもしれません。

でも、こうした重厚な基盤の上に、ヒーローが活躍する物語が生まれていって、池井戸人気が広がっていったのだなー、と思います。

webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 池井戸潤 
  1. 2018/09/04(火) 22:00:00|
  2. 2018
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/2035-4c5cd405
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。