本と旅とそれから おそろし/宮部みゆき

本と旅とそれから

おそろし/宮部みゆき

先日読んだ「あやかし」(感想文は►コチラ)に収められていた一編が面白かったので、シリーズを全部読んでみることにしたこちら、1冊め。

テーマが何にしろ、文章がよいので、面白いに決まってるわの物語。
おそろし
おそろし(三島屋変調百物語事始)/宮部みゆき(角川書店)

江戸の三島屋という大店に引き取られてきた主の姪・「おちか」が聞き手となり、訪れる客が自身の経験した不思議な話を語る、という形式。この聞き手のおちか自身も大きな悲劇を経験してきた身で、単に他人の話を聞くというだけの役回りではなく、彼女自身の物語が、彼女に語られる客たちの物語と織り合されていきます。こうした複雑な形式がうま~く形作られているところなども、さすがの筆力。

タイトルが「おそろし」とあることからもわかりますが、本書に収められている物語は、いずれもちょっとした怪談話です。でも、ひたすら怖い、という話ではなく、確かに背筋がゾッとするけれど、切なくもあり、温かくもあり、いろいろな感情が込められたお話ばかり。なので、「おそろし」という本にしてはおそろしさは半ばぐらいというところです。

つくづく思いますが、このての恐怖は、そもそも人間の内にあるものですね。自らの良心や道徳心に反する行いをしてしまったとき、その後ろめたさや後悔の思いが、幽霊や幻を見させる。ひとりひとりだけではなく、家族だったり同僚だったりというグループで同じ思いを抱いて同じ幽霊を見たりもする。人間は本当に揺れやすいものですね。

その意味では、良心を持たない者や、頑なな正義感に支配された人間って怖い。盲目的な信仰心などもそう。揺れないから幽霊も見ないし、自らを省みるなんてこともしない。死ぬまで(あるいは殺されるまで)突っ走る。
そんな人間なんじゃなかろうかという人の犯罪のニュースを耳にすることが多い昨今。かつては、良心を持たない人間なんているはずないと思っていた頃もありましたが、今は、そんな信じられないような人間が現実にいるのだ、と思っています。

おそろしい、という感情は、それはそれで重要なのだなあと思うのでした。


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