本と旅とそれから 流/東山彰良

本と旅とそれから

流/東山彰良

あー、やっと読めました。本書は、以前一度借りてきて、20~30ページ読んだところで何となくやめて返却してしまったのです。最近は軽めのものばっかり読んでいたからなのか、台湾を舞台にした、中国語(?)読みの漢字だらけの物語に違和感を感じて、何だか入り込めなかった――の、かなぁ…。

でも、途中でやめてしまうのはもったいないというか諦めがつかないというか、とにかくその後ずっと気になっていたので、今回また借りてきたというわけです。
流
流/東山彰良(講談社文庫)

今回は、「読みきるぞ」という決意が固かった(大げさ)せいでぐいぐい進めたし、漢字も全部日本語読みにしちゃったので(文庫はルビが小さいから、いちいち確認するのが面倒なので)、物語にも入っていけました。

それにしても、なぜ本書がこれだけ気になっていたのかなぁ。直木賞受賞作だから、だったかな?たぶん新聞か何かで書評を読んだに違いない。全然覚えていないけど…。

台湾人の若者・葉秋生(イエ・チョウシェンというか「よう・しゅうせい」)が主人公で、彼の半生(までいかないか、最初の25年)の物語――であり、そこに、彼の祖父を殺したのは誰か?というミステリの要素が盛り込まれています。舞台が台湾で、1970年代から90年代ぐらいにかけての物語なので、激動の歴史物語の雰囲気もあり、混沌としたアジアの異国の香りもあります。

そう、混沌、カオス。台湾での秋生の20台半ばまでの日々は、ヤクザやら幽霊やらゴキブリやら、ケンカやら軍隊やら恋愛やらでぐっちゃぐちゃな感じ。
その中で「へえぇ」と感心させられるのが、親族の結びつきの強さです。

祖父母、伯父母・叔父母、従兄弟。血族はもちろんですが、そこにさらに「兄弟分」なる存在が含まれます。生死を共にした仲間、とでも言えるでしょうか。特に、抗日戦争とか、共産党と国民党の内戦などというものが主人公の祖父母の時代にあったので、祖父が連れ帰って来た、殺された兄弟分の残された息子、などという存在も、「叔父さん」として存在したりします。

加えて、近所のお馴染みさんみたいな人々も。目上の者にきちんと挨拶しろとか、敬意を示せとか、日本以上――というより、もはやあまり日本では見られなくなった社会的な慣習が幅を利かせています。

どの一族にもたいてい数名は素行の悪いのがいて、一族郎党、その人物にはかなりの迷惑をかけられるのに、文句を言いつつも、最終的には皆、その人物を見捨てない。その辺がアジアっぽいかも。
ただ、そうした濃い人間関係はマイナスに作用することもあって、兄弟分の失敗に巻き込まれてヤクザに目を付けられてしまったりもする。

逃げたり追いかけたりの日々を縫うようにして、「祖父は誰に殺されたのか」を追い求め続ける主人公。やがて彼はその手がかりをつかみ、それを確かめようと、祖父の死の原因となった地に立つべく、中国へ渡る。

以前、沖縄のゴキブリは、日本本土のそれよりはるかに大きいと聞いて戦いたことがあります。もしかすると、台湾バージョンはさらに大型なのかも。70年代の日本のゴキブリホイホイでそれを捕まえようとする話には、大笑いもし、怖気をふるわされもします。

ただ、最後に残るのは、戦争の悲惨です。戦争を始める人々は、自分たちの側にこそ正義があると思ってそうするのかもしれませんが、実際に戦う人のレベルでは、そのどちらにも正義などなく、裏切りも、皆殺しも、やられたらやり返し、またそれを返す、の連鎖です。どちらが先にひどいことをしたのかなど、しまいには誰も覚えていない。どちらかが諦めるまで復讐を続ける。

その殺し合いにまでも、中国的な濃い人間関係が反映され、悲しくもあり、うんざりもさせられます。

著者の東山さんは、台湾生まれで9歳から日本に暮らしておられるそうで、日本語ネイティブということなのでしょうが、何となく文章に漢字が多かったり、ちょっと古風な表現が多かったり、漢字の文化の色彩が濃いなー、と思いました。


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  1. 2019/03/10(日) 22:00:00|
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