本と旅とそれから 冷たい校舎の時は止まる/辻村深月

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冷たい校舎の時は止まる/辻村深月

辻村さんのデビュー作だそうです。
上下各巻とも、600ページに迫る一大長編。
・・・そうなのですか。これまで数作読んだ辻村作品の中で、目下のところ一番好きかも。それがデビュー作とは、意外というか――ちょっとフクザツ。
「冷たい校舎の時は止まる」

冷たい校舎の時は止まる(上)(下)
/辻村深月(講談社文庫)


ユニークにして不思議な舞台設定は、デビュー作からバッチリ。
とある雪の朝。県下随一の受験校・私立青南学院高校三年二組の仲良しの男女8人が教室に着いてみると、そこには彼ら以外、誰もいなかった――。

いつの間にか校舎のドアも窓もすべて開かなくなっており、固定もケータイも電話は通じない。閉じ込められた彼らがふと時計を見ると、それは5時53分で止まっていた。それは数カ月前の学園祭最後の日、彼らのクラスメートが、校舎屋上から飛び降りて自殺した時間。なのに、閉じ込められた彼らは、なぜかどうしても、そのクラスメートが誰だったのか思い出せない――。

誰かが自殺する(あるいは「した」)、それは事実なのに、それが誰なのか思い出すことができない、という設定は、先日読んだ「名前探しの放課後」(感想文は►コチラ)と同様。それを突き止めようと、高校生の友人たちが力を合わせるというのも、大体似ています。

あれを読んだときも思いましたが、描かれている高校生たちのしっかりしていることといったら。もちろん人物設定にバリエーションはありますが、リーダー格の数名は、今すぐ後をついていきたくなるような出来た人物揃い。それにしても、あんなに完成度の高い友人関係って、現実に存在し得るものかしら…。

物語世界は、「誰かの精神世界の中」。SFというよりはむしろオカルトっぽい設定ですが、深く追求せずに受け入れれば、あとはさながら「そして誰もいなくなった」です。目に見えない何者かによって、高校生たちはひとりふたりと数を減らしていきます。その「誰か」とは誰なのか。最後に残されるのは誰なのか。自殺したのは誰?真相は?

ちょっとミステリーでもあります。

高校生たちの中の、ひときわ精神的弱さを持った少女の名が辻村深月。デビュー作ならではの設定かもしれません。思春期の少女ならではのキャラ設定とも言えるかも。傷つきやすく、頼りなく、感受性がやたら強く、私などの目から見るとちとイラつくような少女。でも、よく出来た彼女の友人たちは、決して彼女を置き去りにはしません。
く~、こんなステキな友人たちに囲まれていながら、いじめに悩むなんてヘンすぎる。

大学受験をひかえた高校三年生という、若者を精神的に追い詰めるある一時期に舞台を設定したことが、物語の大きなカギ。後から振り返れば長い人生の中のたった1年にすぎない時期ですが、その最中にある若者たちにはそれがそうと認識できない。人間とは、とことん主観的な生き物ですねえ。

さて、今後、このデビュー作を「超えた!」と思える辻村作品に出会えるでしょうか?


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  1. 2019/03/16(土) 22:00:00|
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