本と旅とそれから 鍵のない夢を見る/辻村深月

本と旅とそれから

鍵のない夢を見る/辻村深月

辻村さんの直木賞受賞作。
・・・へぇぇ~、これが。どちらかというと薄めの短編集です。5編収録。
鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る/辻村深月(文春文庫)

これまで読んだ辻村作品とは、あまり繋がらない雰囲気の物語ばかりです。
すごく現実的。これまでは「辻村作品といえば、物語の設定の独特さが特徴」とか思ってましたけど、本書の5作品はどれもごく普通の日常を舞台に、人物を描き込んだ物語だと思います。

そのすべてに「何ともいえない」ような「どうにもしようのない」ような人物だとか人の気持ちが描かれている、ような。
同時に、描かれる人たちに共感できるような気がしたり、共感はできないけど「いるだろうな、こゆヒト」という気がしたり。人間っていろいろだし、その置かれる境遇もいろいろだし。

誰でも何か人に言えない秘密や悩みがあるのだろうな、と思うんですね――当たり前ですが。一般的にも人気があって、私も深く頷いている伊集院静さんの名言「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」だと思うのです。
でもときどき、この名言に逆らうような、「かかえ悩むような事情なさそう」な人を見かけるんですけど…。何というか、私の理解をはるかに超えるような人が、世の中にはけっこう多いような気がちょくちょくするんですよねえ。

それはともかく。本書の各短編に描かれる人々も、好んでその境遇に身を置いたり、そうした心境に至ったわけではないのでしょうが、でも、そうなってしまうことを逃れられなかった。その、どうしようもなくそこまで流れていってしまった状況に、共感というか哀れみのようなものを抱きました。

巻末に、辻村さんと、受賞時の直木賞選考委員のひとりだった林真理子さんの対談が掲載されています。
直木賞って、私などはよく「この作家さんに授賞するのは納得だけど、それにしてもなぜこの作品?」と思い、きっと文藝春秋とか文壇とかのいわゆる「大人の事情」が働いているに違いないなどと疑ってましたが、この林さんのコメントを読むと、タイミングにもちゃんと理由があるようです。

(まあそりゃ、理由がまったくないわけはないでしょうけどね。でもやっぱり、作品の優劣や作家の成熟度だけじゃないと思う…。伊坂さんがいつまでたっても取れない、あるいは取らないのだって納得できないし。)

大きな賞をもらった作家と、その賞の選考委員の作家の対談なので、立場の違いが明確なのがちょっとイヤなのだけど、山梨県という同郷のお二人の話は興味深いものでした。


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  1. 2019/04/21(日) 22:00:00|
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