本と旅とそれから BT’63/池井戸潤

本と旅とそれから

BT’63/池井戸潤

2003年初出の、池井戸さんとしては比較的初期の作品。
この本、以前一度借りてきて、冒頭を少しだけ読んだもののなぜか続かず一度返却し、今回はそのことをすっかり忘れていてまた借りてきたものです。今回は読み終えました。
BT’63
BT’63/池井戸潤(講談社文庫)

でも、冒頭やっぱりあまりすんなり話に入っていけなかったのは同様でした。
その理由を考えるに、ちょっと物語のトーンが暗いということかと思います。
主人公が、精神病を患って職を失い、妻とも別れて失意の日々をおくっている、というところから始まるのです。

その中で、亡くなった父親の形見の品(ちょっと派手なデザインの制服と、トラックのキー)を見つけ、それを身に着けたところ、過去にタイムスリップする、という展開です。
あ、タイムスリップといって、普通のSFのように本人が過去に移動するというのではなく、結婚前の年齢の父親の頭の中に潜り込む、みたいな感じになって、父親の目線で過去が見えるようになる、といったものです。

それで、会社員だった父の目を通して勤め先だった昭和30年代の運送会社の様子や、そこを舞台に展開する犯罪や企業の苦難などを知り、それまであまり近しく感じられなかった父への敬愛が生まれ、自分も立ち直っていく、という物語。

池井戸作品らしく、最後は明るいといえばいえるのですが、そこに至るまでがかなり暗い。特に、運送会社のトラックドライバーたちを陥れて犯罪に加担させる闇社会の人間たちの動きが恐ろしく、彼らに脅されて絶望していく無力な男たちの姿がすごく重苦しいのです。結局殺されてしまうし。人を脅したり、殺したりしても何も思わない、どころかそれを楽しんですらいるかのような、まさに人の皮をかぶった鬼のような人間たちの姿が、読んでいて心を暗くさせます。

それに、最近の現実社会のニュースを見ていると、そんな人間が決して架空の物語の中だけのものではないことが日々明らかで、そんなことを考えてしまうのもちょっとイヤなんですよね。
生まれながらの悪人はいない、と思ってみても、同じような境遇に生まれ育ってもダークサイド(スターウォーズふう)に落ちる人はいると思うと、創造主のようなものがいるならば、それが人間というものに、闇の種みたいなものをあらかじめ仕込んでいるのじゃないかしらと思えたりしてしまいます。

そんなことを考えさせられるのが、後の池井戸作品にはないことだな、と思います。
まあ、暗い面とか、人間の現実といった要素があることを作品の深みととらえることもできると思うので、初期の作品には、最近の池井戸作品にはない良さがあった、と言うこともできるのだとは思いますけれど。

それに、終盤はとてもスリリングで、最後まで一気読みになったのも確かです。

とはいえ、まあ――池井戸作品の中では、あんまり好きじゃない部類だったかな。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 池井戸潤 
  1. 2019/09/18(水) 22:00:00|
  2. 2019
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/2086-7027ac12
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する