本と旅とそれから あかんべえ/宮部みゆき

本と旅とそれから

あかんべえ/宮部みゆき

全体の印象としては、宮部版「しゃばけ」みたいな感じ。
ほわっと軽いオリジナルの「しゃばけ」と比べ、宮部さんが語ると、ちょっと質量が増す感じがします。

とても面白かった。
あかんべえ

あかんべえ/宮部みゆき(PHP文芸文庫)

主人公は、おりんという名の少女。歳は――あ、今これを書くのでもう一度本を確認したら、12歳…?え~?5、6歳かと思った!ずっとそのつもりで読んでましたけど!
だって、12といえばもう中学生でしょう?

確かに、5、6歳にしては情夫(いろ)なんて言葉を知っていたり、状況に応じて口をつぐんだり、結構巧みに嘘をついたりするので、「歳に似合わなすぎる」と思いましたが、一方で、結構すぐに泣くし、祖父母に甘えたりもするし、大人が近くにいない時は火を使ってはいけないと言い付けられていたりと、幼い子供ならさもありなんという描写が多かったので…。

ま…まあいいや。

このおりんとその両親が、深川の一角に新しく料理屋を開くところから物語がスタート。
ところが、一家のこの新しい住まい兼職場には、あれこれと「おばけ」が住み着いていることが発覚します――といっても、それが見えるのは当初おりんだけだったのですが。

様子のいい若侍や、美形のお姐さん、おばけのくせに生きている人間を療治してしまう按摩のおじいさんや、刀を振り回す物騒な男。そして、おりんの顔を見るというと「あかんべえ」ばかりする女の子。

若侍やお姐さんの「おばけさん」は、おりんとすぐ仲良しになり、おりんの知らないことをいろいろ語ってくれたりもするのですが、一方で、化け物が出るという噂のたってしまった新しい料理屋は商売上がったり…。
この家にはなぜおばけが出るのか。彼らはなぜ成仏しないのか。そして、生きた人間たちにもいろいろと厄介な問題が起きて――というお話。

おりんがおばけたちの「事情」をいろいろと探り、少しずつ事実が現れていく様子はミステリー小説ともいえます。その事実が結構怖くて、ちょっと怪談めいてもいます。まあ、大部分は、幼い(といっても12歳か~…)少女の果敢な冒険物語ですが。

真実を探るためとはいえ、このおりんちゃん、嘘をつきすぎるな、というのが気になったといえばなったでしょうか。どの嘘も、善意から出たものではありますが・・・。
それと、彼女の両親が作る見事な料理が、おばけ騒動でほとんど食されることなく台無しにされていくというのが、あまりにもお気の毒な感じ。これじゃあ心が折れるでしょー。

冒頭部分から最後に巧みに回収されるまで、きっちり伏線が張られているところなどは、お見事だな、プロの物書きさんってすごいな、という感じです。まあ宮部さんだから当たり前というぐらいですが。

あやかしと違って、おばけは成仏するのがハッピーエンド。それはすなわちおりんがおばけさんたちと別れなければならないということで、めでたしめでたしが、少し寂しいラストでした。


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  1. 2019/09/30(月) 22:00:00|
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