本と旅とそれから 黒の狩人/大沢在昌

本と旅とそれから

黒の狩人/大沢在昌

シリーズ3作目。うぅむ、面白かった。

面白かったのですが、関係者の数が結構多く、ふたつ以上の名前を持っている人も多く、それが複雑に関係し合っているため、途中で時々わけがわからなくなったりしましたが、どこまで戻ればわかるようになるかもこれまたわからないためそのまま読み進み、そのうち何となく筋がつながる、という感じでもありました^^;。
黒の狩人

黒の狩人(上)(下)/大沢在昌(幻冬舎)

3作目は、前2作ではちょっと脇役の感もあった、新宿署の刑事・佐江が堂々の主人公。
まあ、「黒の狩人」という位置づけなのは、上司からの命令で、この佐江刑事が渋々コンビを組むことになった中国人、毛(まお)。

この毛という名からして、本名を呼ぶとまずいこともあるだろうからと、出会って早々に二人が決めた偽名です。でもって、この人物の素性というのも、物語の大きな謎のひとつ。

今回は中国安全部という、中国のCIAみたいなところ(?)が大きく関わってきます。日本の方は警視庁公安部。ちなみに、佐江刑事は公安とは全然違う所轄の組対課の所属――つまり、暴力団の担当。なのになぜ、国家同士の情報戦みたいなものに巻き込まれるのか、というとそこにはフクザツな事情があります。

表面的には、東京近辺で中国人が連続して殺されるという事件が起き、佐江はその犯人を探すことになり、「中国人の関係する犯罪は中国人が一緒の方が、言葉も習慣を知るうえでも便利だろう」ということで、捜査協力者という形で毛と組まされるのです。

シリーズ前2作は、新宿の暴力団とのやり取りが物語のメインで、本作でもそうした場面はかなりあるものの、中心となるのは中国との間の諜報活動のあれこれ。外務省の美しい女性職員も登場し、だましたりだまされたり、だまされたフリをしたり。

本当にこの、物語の複雑さ。誰が誰に命じて誰を殺させたのか。その「誰か」は本当にその「誰か」なのか。殺させたというけれど、本当に死んでいるのか。生きているんじゃないのか?そうだとしても日本にいないんじゃないのか?中国に帰ってしまったのでは?スパイなんじゃ?いや、二重スパイなんじゃ?

そうした素性の問題に加え、時系列のあれこれもあるし。誰かが誰かを殺したのは別の誰かが誰かと話をした後なのか先なのか、そのときその誰かはあの秘密を喋ったんじゃないか、いや喋ってないかも、もし喋っていたとしたら――みたいな話が延々と続く。ああ、刑事もスパイも外交官も、何て頭がいいんだろう、会ったこともなく名前でしか知らない人物(それがもしかすると会ったことある人物の別名かも知れなかったりして)たちの複雑な人間関係や行動記録を全部頭の中に入れていて、丁々発止のやり取りをするんだから…。

で、作家はそれをすべて自分ひとりで創作するんだからさらに驚きます。

途中で誰が誰やらわからなくなっても、情景描写の緊迫感が面白くてそのまま読んでしまいます。そのうちまた何となくわかってくるし。

前昨のラストがとてもアンハッピーだったせいか、本昨のラストは、ちょっと拍子抜けするくらいのハッピーエンド。いずれにしても、あのヒトやあのヒトが死ななくてよかった。不幸な末路をたどることにならなくてよかった~。

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