本と旅とそれから 空海の風景(上)(下)/司馬遼太郎

本と旅とそれから

空海の風景(上)(下)/司馬遼太郎

司馬遼(敬意を込めて、こう呼ばせて頂きます・・・)の本を読む時は、なかなかスピーディに進むというわけにはいきません。この作品も、まるまる1週間かかりました。読んだのはちょっと前で、奈良旅行直前でした。物語の記憶も新しい時に、空海ゆかりの地のひとつ東大寺を訪れることができて幸せでした。

にしても、上巻は図書館の本が古くて、活字は小さいわ漢字は旧字体が多いわで、「何で私は日本語読むのにこんなに苦労してるんだろう・・・?」と、危うく自己嫌悪に陥りそうになりましたよ。漢文の引用も多いし。


空海の風景(上)(下)/司馬遼太郎
(中央公論社)


何年ぶりかで司馬遼作品を手に取った理由は、先日読んだ篠田真由美さんの「館を行く」。

►「館を行く」の感想はコチラ

作者と建築探偵が最初に訪問するのが大阪の司馬遼太郎記念館なんですね。その中で、二人がそれぞれに「マイ・ベスト司馬遼作品」を挙げていて、篠田さんがうっとりと「燃えよ剣」、探偵が冷めた調子でこの「空海の風景」を挙げていたんです。
うんうん、「燃えよ剣」は幕末ロマン、私もマイ・ベストに挙げてもいいかな・・・(「竜馬」や「花神」も捨て難い。あ、「翔ぶがごとく」も・・・)?でも、読んでなかった、後者。

弘法大師空海の物語・・・小説ではありますが、多分に歴史を巡る司馬遼の研究・・・というか、エッセイ的な雰囲気も多い作品です。正直なところ、上巻の最初の200ページ近くはスローな感じで、私にとって司馬遼作品がかなり久しぶりだったこともあり、いまひとつ入り込めない感覚もありました。「燃えよ剣」や「竜馬がゆく」は、もうすぐに歴史物語の中にどぉぉっとハマる感じでしょ?それと比べると、何となく、司馬遼がぽつぽつと「空海ってさ・・・」と語るのを聞きながら、彼の大和散歩に付き合ってのんびり田舎道を歩いているような感覚、そんなふうでした。

物語がペースを上げるように思われたのは、空海渡唐の辺りから。そしてこの時、同時代のもう一方の宗教界の巨星、叡山を開いた最澄が登場します。
この二人の対比が、この作品のひとつのメイン要素と言っていいのではないかな。
「動」にして天才型の空海、「静」にして秀才型(といってもやはり天才に違いはないのですが)の最澄。最初は空海がモーツァルト、最澄がサリエリかと思いましたが、司馬遼は最澄のこともやっぱり高く評価しています――もちろん、現在も信仰を集める叡山の開祖ですから、滅多なことは書けないという配慮もあるかと思いますが・・・。
司馬遼にしては珍しく、人物の好き嫌いをあまり激しく打ち出していませんでした。
(「燃えよ剣」の近藤勇なんて、「そこまで言う?!」っていうくらいコテンパンでしたもんね~・・・。)

小学校の頃、歴史の勉強で「真言宗をもたらした空海、天台宗をもたらした最澄」と覚えて以来、あとは大した追加知識もなかったこの二人の偉大な僧侶について、司馬遼の視点からとはいえ、じっくり読んだなぁ、という充実感でいっぱい。
確かに、他の司馬遼の作品と比べると、淡白で抑えたトーンの作品ですが、なるほど建築探偵が好むのも頷ける。1200年も昔の人の話なのにねぇ・・・。

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  1. 2007/07/02(月) 21:45:00|
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LazyMikiさん、すごーい。一体、いつ、読書をなさっているのでしょう?読書だけではなく、ブログの更新もあるでしょうし、お仕事もあるでしょうし、掃除洗濯その他の家事もあるでしょうし、一体、どうやってこれだけの本をお読みになる時間をひねり出していらっしゃるのやら。つめの垢を送っていただきたく存じます。
  1. 2007/07/02(月) 22:01:00 |
  2. URL |
  3. 都子 #79D/WHSg
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No title

◈都子さん、
読書ねぇ・・・私にとって、一番読書がはかどるのは電車の中です。
田舎暮らしで、最寄り駅から片道45分間、同じ電車に揺られてますから。
(乗過ごすのだけが問題ですが・・・。)

でも、ブログ始めてから、生活スタイル変わったのは確かかも。
以前は、一日7時間は寝ていたものですが・・・(^^;
  1. 2007/07/02(月) 22:24:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

私もこの本、図書館で手にしてみたのですが
あまりに難しそうで、断念しました。
すごいなぁ、読まれたんだ~。
私も大和散歩、ご一緒したいですー。
そういえば私、比叡山はまだ行ったことないんですよー。

  1. 2007/07/02(月) 23:33:00 |
  2. URL |
  3. chiyomi #79D/WHSg
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No title

◈chiyomiさん、
確かに、司馬遼作品の中でも、物語性の強いものと比べると、とっつきにくい感じです。
特に冒頭しばらく。
まさにスルメみたいで、最初しばらく固いです。でもまさに、噛めば噛むほど味が・・・というところでしょうか。

chiyomiさんと二人で司馬遼の後ろにくっついて大和散歩したら、きっと二人でぺちゃくちゃ喋っちゃって、文豪にうるさがられそうですね(^^)
比叡山には修学旅行の時に一度行ったきり。
ひとりで叡山を旅行していた女性が殺される、とかいうとんでもない事件があったりして、ひとり旅では行きにくいというのもあったのですが・・・。
八瀬からロープウェーですよね。
私も、また行きたいなぁ・・・。
  1. 2007/07/02(月) 23:45:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

確かに、通勤電車は読書に有効です。現在の勤務先にたどり着くには結構時間がかかるのですが、ほとんどバス。ある路線を始点から終点まで、道の混み具合にもよりますが、一時間ほど揺られてゆくのです。で、私はバスでは本が読めない。すぐに酔います。というわけで、電車で通勤できるようになりたいなぁと思う今日この頃。
  1. 2007/07/03(火) 04:56:00 |
  2. URL |
  3. 都子 #79D/WHSg
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No title

◈都子さん、
往復2時間、まとまった時間があるんですねー、通勤で。
今は音楽でも聴いておられるのかな?
私は通勤・通学でバスを使ったことがないのでよくはわかりませんが、確かに座席の向きとか運転の具合とかによっては、酔ってしまうかも。

電車の中は集中できますよー。
(まぁ、人にもよるのかな・・・。)
  1. 2007/07/03(火) 22:19:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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