本と旅とそれから 天璋院篤姫(上)(下)/宮尾登美子

本と旅とそれから

天璋院篤姫(上)(下)/宮尾登美子

や~っぱり読んだことがあったか、前に・・・。
きっともうこれから先は、こんなことがどんどん頻繁になっていくに違いない・・・。
でもって、ほとんどを忘れ去っているので、再読といっても初めてみたいなものなのでした。

天璋院篤姫(上)(下)[再読]/
宮尾登美子(講談社文庫)


読み始めてしばらくして「むむ、これは前に読んだことがある!」と思い始め、やがてそれを確信したのが、老中阿部正弘が腎虚という病気で急死した、というくだり。

前に読んだ時、腎虚ってどういう病気?と、辞書をひいたのを思い出しました。
(「おやまぁ」って病でしたが・・・^^;)

今年というタイミングなのでやはりどうしてもNHKのドラマと比較しながら読むわけです。
瑛太さんが演じてすごく魅力的な肝属尚五郎という人物は、原作には登場しません。篤姫が輿入れ前、西郷、大久保という下士の者たちと友誼があったというのもドラマだけ。
当然のことながら、ドラマはすごく現代的かつ視聴者ウケするようにできているわけですね。

ただ・・・カンペキ忘却の言い訳めくのですが、私はこの「天璋院篤姫」という物語、宮尾さんの作品の中ではあまり好みではないような気がします。
宮尾作品はそれなりに読んだとはいえ、代表作といわれるもので未読のものもいくつかあるので、読んだものの中では、ということなのですが。

宮尾さんって常に、一本筋の通った、外見はどうあれ芯の強い女性を描く作家さんですが、この「篤姫」では、ちょっと強引だったかなと思うのですね。

「あとがき」で、本作品を書こうと思い立った理由について、それまで篤姫といえば皇女和宮とのからみで描かれることが常で、嫁に当たる和宮をいじめた女、とばかり描かれることに疑問を感じたから、というようなことを書かれています。

実際、「篤姫」の序盤は将軍家輿入れまでの顛末、中盤は輿入れ後の将軍との夫婦関係の悩みが中心に展開しますが、後半はもっぱら和宮や京都からやって来た女中衆との確執、葛藤が描かれます。
私には、身分や背景といった世のしがらみに縛られた気丈な女性が、やはり別のしがらみを背負ったこちらは少々気弱な女性との人間関係に悶々とする姿、という感じに読めました。

この時代、強い女の活躍を描こうとするには、まだ無理があるのではないでしょうか。

私が皇女和宮という人物の存在を知ったのは高校生の頃、有吉佐和子さんの「和宮様御留」という作品を読んだ時でした。
将軍家へ降嫁した和宮は実は替え玉だったという、今思えばありえない設定の物語なのですが、有吉さんの筆力が描く物語はもの凄い迫力で、おかげで私はいまだにTVなどで祇園囃子を聞くとぞくっときます――替え玉に仕立てられた少女が、過酷な環境の変化にやがて狂っていくのですが、その時このお囃子を口ずさむ、というシーンがあるのです。

歴史の流れや、当時の社会のあり方に、抗おうとしてもしきれない。
宮尾さんは、見事に抗い輝いた女性として篤姫を描きたかったと思うんだけど、私には篤姫の苦闘する姿までしか見えなかった、という感じ。

大河ドラマの方は快調ですよね?
原作でさえ、歴史の事実とはかなり違っていそうな感じですが、ドラマはそれをはるかに上回った、型破りで元気いっぱいなお姫様とその周囲の人々が活躍して。

原作読んでちょっと悶々としたので、ドラマにはスカっとかっとんで欲しいです。

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tag: 宮尾登美子 
  1. 2008/04/27(日) 22:13:00|
  2. 2008
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『天璋院篤姫』

宮尾登美子 『天璋院篤姫』(講談社文庫)、読了。 有吉佐和子の『和宮様御留』を読んだときに天璋院という存在を知り、 そちらの本も読んでみたいなぁ・・・・と、ブックオフで調達して積読状態にしていたら、 大河ドラマで『篤姫』が始まってしまい、「ブームの中で読むのもなぁ・・・」と積読を継続。 江姫ブームに沸く地元のお祭り期間中に一気読みを企んだ天邪鬼のかもめ組でございます。 宮尾...
  1. 2016/03/11(金) 23:21:10 |
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コメント

No title

lazyMikiさま こんばんは

宮尾登美子さんの『篤姫』 まったく読んでいませんでした。
ドラマと原作、相当に異なっているんですね
よく、宮尾さんが許されたなって思うですが~
まぁ、良いかと思われたんでしょうか~

有吉佐和子さんの「和宮」は読んだような気がします~。
テレビで「大奥」というのも放映されたりして
この時代の女性にライトが当たってきているのかもしれませんね

尚五郎くんが原作にまったく出てこないこと、驚きでした。
本当に、宮尾さん、良く許可しましたよね~
有吉さんであれば、きっと怒ったと思います~

ミ(`w´)彡 
  1. 2008/04/29(火) 19:11:00 |
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  3. rudolf2006 #79D/WHSg
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No title

◈rudolfさん、
こんばんは~^^

そうですね。
まあ、原作とドラマがかなり違うっていうのは、よくありますよね。
以前、同じ宮尾さんの作品「菊亭八百善の人々」という江戸前の料亭の物語が、やはりNHKでドラマ化されたのですが、これもかなり原作と異なっていました。
私は原作がとても好きだったのですが、物語のとても重要な要素のひとつが180度変えられてしまっており、かなりがっかりしました。
あれなんかはホントに、よく宮尾さんが許したなぁ、と思います。

有吉さんの「和宮」も映像化されていますよね。
確か、気が狂ってしまう娘を大竹しのぶさんが演じておられたような・・・いかにも彼女らしい、鬼気迫る演技だったと記憶しています。
あの時代の女性の物語って、華やかな面もあるけれど、何だか息がつまるようなところもありますね・・・。
  1. 2008/04/29(火) 20:58:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

幕末薩摩好きのayanoです。
私もこの原作読みましたが、正直宮尾登美子さんでさえ、篤姫という人をつかみ切れてなかった&描き切れてなかった気がします。おそらく、史料に忠実に書こうとした結果、物語としては膨らまし切れなかったのではないかなと。ただ、そのあたりが息苦しくなりつつも、結構リアルな物語としてこの本を読みました。

で、大河ドラマは。。。
相当ぶっとんでますよね。尚五郎君は後の小松帯刀ですがまあそれはいいとして、いくらなんでも今泉島津家の姫だったころに、西郷・大久保と面識があるわけはないだろうと、テレビの前でのけぞりましたもん。時代考証もかなり無視しているし、方言指導もハチャメチャだし、西郷、大久保、大山あたりの描き方も相当適当だし。
この時代の薩摩の話の大河ドラマだと、昔「翔ぶが如く」がものすごくカッチリ作ってあったので、どうしてもそれと比較してしまい、アラが気になるのです・・・。
  1. 2008/04/30(水) 20:58:00 |
  2. URL |
  3. ayano #79D/WHSg
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No title

(長すぎると怒られたので分割)

……とまあ、言いたいことはいろいろあるんですが、でも細かいことに目をつぶればドラマとしては面白いので毎週観てます(幕末薩摩好きだし)。「わかりやすさ」を重視して、ホームコメディに仕立て上げたのが今年の大河が人気ある理由じゃないかな、と思ってます。

和宮は、観てない&読んでないんですよね。大竹しのぶが和宮ですか!それは観てみたい・・・

#ちなみに私も、腎虚がどんな病気か調べたクチです(^^;;
#でも最近の研究では、いくらなんでもあのころの阿部正広がそんなに暇なわけないだろうし、ストレス性の腎臓病だったのではないかということになっているそうですよ。
  1. 2008/04/30(水) 21:02:00 |
  2. URL |
  3. ayano #79D/WHSg
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No title

◈ayanoさん、
私も幕末好きです^^
特に誰が、とかどこの藩が、というのはなくて、歴史の転換期に懸命に生きた人々が群像として好きです。
まあ、司馬遼の作品にのめりこんだことが大きいのですが。

大河ドラマ、「翔ぶが如く」良かったですよね。
司馬遼作品が原作のものは、原作に忠実に作られているように思います。
原作者があまり変えることを認めなかったのではないでしょうか?
薩摩弁なんて、字幕が出ていましたものねえ。
うちは父が鹿児島なので、方言にはうるさくて、「鹿児島の中でもあの辺りはああは言わない」とか、ケチつけてましたけど。
私は、幕末群像モノとしては、同じ司馬遼原作の「花神」が特に好きでした。
あれは長州メインの話でしたが・・・。

ドラマはやはり視聴率重視ですね。
「新撰組!」で、近藤、土方、勝、坂本が四人でお酒を飲んだシーンには、私ものけぞりました。
  1. 2008/04/30(水) 22:19:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

◈ayanoさん、
(ご同様に、続きです。)

「和宮様御留」は、原作もすごかったです。
大竹しのぶさん(だったと思うんだけど・・・違ったかなぁ)が演じたのは和宮のいわば影武者(・・・影姫とでも?)となった娘だったのですが、狂っちゃうんですよねぇ。
で、さらにもうひとり替え玉が用意されるんですが、その娘が、片手が手首から先がないんですよ。で、それに気付いた女官が、「こんどの姫さんは手ぇがおへんのや」と言うシーンが、ゾクっと怖かった・・・。

なりほろ。
ストレス性の腎臓病・・・。
本にも書かれていたけれど、あの頃って女性の化粧品に含まれていた水銀などが原因で、今から見ればすっごく不健康な環境にあったんですね。
将軍の二人目の奥さんもすごく小さかったとあったし。
知らないってこわいなー。
  1. 2008/04/30(水) 22:19:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

高校生の時に先生が「和宮様御留」が面白いとおっしゃってて、
心の片隅に留めているのですが、未だに読めていません^^;
Mikiさんは高校生の時にちゃんと読んでらしてて、やっぱりさすがに読書家ですね。
歴史をアレンジしたお話なんですね。

「篤姫」の大河ドラマも見てみたのですが、原作とは違った脚色になってるんですね。
知らないとそのまま信じてしまいそうです(汗)。
  1. 2008/05/02(金) 00:44:00 |
  2. URL |
  3. 創 #79D/WHSg
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No title

◈創さん、
私が高校生の頃、多分創さんは小学生ぐらいでは・・・^^;
あの頃は、中の良い友人に本好きが多くて、私は大抵そういう友人たちが「良い」と言う本を追いかけるようにして読んでいました。

歴史小説って、本当に、見て来たように書いてありますものね。
架空の人物なども、まったく違和感なく実在の歴史上の人物たちと会話したりして。
上手い作家さんのフィクションほど、知らないと信じちゃいますよねー。
  1. 2008/05/02(金) 22:20:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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