本と旅とそれから 村田エフェンディ滞土録/梨木香歩

本と旅とそれから

村田エフェンディ滞土録/梨木香歩

梨木さんの紡ぎ出す物語って、時間の流れが何だか不思議。

この「村田エフェンディ滞土録」の舞台は、20世紀初頭、日露戦争と第一次世界大戦の間ぐらいのトルコ。そこへ、学術研究のために日本から単身留学した村田氏の日常の記録・・・なんだけれども。


村田エフェンディ滞土録/梨木香歩

なんだか、「深夜特急」のトルコ編とすごーく近いものを感じる部分などもあったり。
それはひとつには、トルコという国の持つ、西洋と東洋、過去と現在とが交差する微妙なポジションのせいもあるかも知れません。

単行本だと巻末解説もないし、梨木さんがこの本を書かれた背景みたいなものが全然わからないのですが、それにしても自然な描写。
だから「深夜特急」を感じたのかな。

かぎカッコ(「」)を使わずに会話が表記されると、でも、何となく古い映画のシーンでも見ているような、ちょっと時間の隔たりが感じられるような気もします。

ドイツ人とオウムがラテン語で喧嘩したり、日本のお稲荷のキツネがエジプトのアヌビス神と懇意になったりと、主人公村田氏の暮らす下宿屋は、空間・時間を超越するトルコの中にあってさらに、生き物の種やら神々の種(?)までも超えているようです。

しかも、最初はそれにビビっていた風もある村田氏が、段々それに慣れちゃって、それに生真面目に反応・・・というか、対応し始めてしまうのが、可笑しいというか何というか。

そうして、あらゆるものが交差し交錯し、混ざり合ったような彼の地から帰国してみれば、そこは「家守綺譚」の世界(ちょっとかぶってるんです►コチラ)。
ええ、こちらではこちらの不思議ワールドがお迎えするわけですね・・・。

帰って来た村田氏を最初に出迎える高堂氏(実はあの世のヒト)が、「家守綺譚」を読んだ後だと、何とも懐かしい、和のユーレイぶりを発揮してくれて心地よい・・・。

物語では、最後の最後に悲しい話が待っていて、あたかも村田氏のトルコでの懐かしい日々を、二度と還らないものとして封印するような結末となっています。

正直なところ、この唐突な結末が、自分の中ではうまく消化できない感じなのです。
でも考えてみると、この作品全体に、香り高い文化や幻想と、扱いにくい社会や政治の現実が共存しているんですよね。

そこのところが、実はわかったようなわからないような。
わからなくても、とにかくそこにあるから、共存していく、ということなのかも。


webcitron01.gif


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tag: 梨木香歩 
  1. 2008/06/04(水) 20:53:00|
  2. 2008
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No title

西洋と東洋の狭間の国が、トルコということでしょうか?オスマン帝国から
第一次世界大戦の敗戦にかけて、近代化を図ろうとしていたあたりのトルコの様子が
良くわかります。5つの国、日本、トルコ、ギリシャ、ドイツ、イギリス
それぞれの国のカラーが良く出ていると感じました。
最後の第一次大戦での不幸な出来事につながるのですが・・・・

この図書館の本の表紙に、中学(高校?)の課題図書とシールが貼ってありました。
途中まで読んだところでちょっと風変わりな、軽いホラー小説みたいな本が
なんで課題図書となるのか不思議に思いましたが、
最後まで読んだ時点で、なぜか良くわかったのでした。

  1. 2008/06/04(水) 22:09:00 |
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  3. bullet4071 #79D/WHSg
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No title

この作家の文庫で唯一読んでないんですよね、これ
深夜特急っぽいなら読んでみようかしら?
#梅ウイスキー、来年楽しみにしてますね?
  1. 2008/06/04(水) 22:36:00 |
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  3. 花侍 #79D/WHSg
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No title

深夜特急のトルコ編って、なぜか印象深かったです。
確かパイロットになりたいクリーニング屋の男の子が出てきたような気がします。
「村田エフェンディ滞土録」、タイトルが一体なんなのだろうと思わせる不思議さがありますね。
梨木香歩さんのことだから、読後、いろいろ考えさせられる宝石のような言葉がちりばめられているのかなとも思います。
  1. 2008/06/04(水) 23:31:00 |
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  3. よしりん #79D/WHSg
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No title

なんか小説だって分かってるんですが、最後の所を思い出すとなんだか今でも目がウルウルしてしまうんですよ。あんまり無いんですけどね、こういうところ。
私は梨木作品ではこれはかなり上位に来るぐらい好きです。
「春になったら莓を摘みに」(タイトル今調べた)のウエスト夫人と下宿の女主人とかぶりません?

私は村田が神様達に対して文句(?)というか大声で批判するじゃないですか。あそこの場面がなんだか好きで村田がいとおしく思えてきます。

TBもらってきますね~~
  1. 2008/06/04(水) 23:45:00 |
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  3. lazybug #79D/WHSg
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ラストは私も納得できないっていうか、悲しくて泣いてしまいました。
鸚鵡が…鸚鵡が…(また泣きそうになってる)
でも「読んでよかった!」と心から思える本でした。
「共存」て、梨木さんの作品の重要なテーマの一つですよね。
私もTBいただいていきます。
  1. 2008/06/05(木) 11:33:00 |
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  3. yurinippo #79D/WHSg
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これまだ読んでません。
ほしいな~って思いながらいつもブックオフに行くのですが、ないです。

それにしても皆さん結構本を読んではりますね。
  1. 2008/06/05(木) 19:05:00 |
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  3. tomate11 #79D/WHSg
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◈bulletさん、
トルコ人の友人オヌール(・・・最近メールやり取りしてないな、また書こう・・・)が、かつてあちこちを訪れて自国の紹介をするのに同行したことがあるのですが、必ずまず最初に、「トルコは西洋と東洋の交差する位置にあり・・・」と言うのが印象的でした。
でもって、いかにギリシャとの間に軋轢があるか、も。
そのくせ、どちらの国も地震国で、被害がある度に、人々は助け合う。

宗教のことにしても、トルコという国は、微妙にして絶妙なバランス感覚を持った国&国民なのだな~、と思うのですね。

課題図書!なんか、懐かしい。
私の頃(=石器時代一歩手前)は、金ピカのシールでしたが・・・。
ナルニア国物語とかも、確か課題だか推薦だかの図書だったんですよね。
いろいろいい本が選定されているんだけど、学校から「これ、課題デス」って言われると、ちぇっ、と思ってしまうワタシはひねくれ者でーす^^
  1. 2008/06/05(木) 23:32:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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◈花侍さん、
もしかして、両方読んでおられる方(bulletさんもそうなのだけど)は、「『エフェンディ』のどこが『深夜特急』じゃっ?!」と思われるかも~^^;
二つの物語の間には、フィクション(だよね?)とノンフィクションの違いの他に、約60年(かな?「深夜特急」って70年代だったっけ?)の隔たりがあるんですけどね。
でも、読んでみて。で、感想聞かせて欲しいな。

梅ウィスキー・・・来年がむばる。
  1. 2008/06/05(木) 23:35:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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◈よしりんさん、
エフェンディっていうのは、いわゆる学究の徒に対する敬称なんだそうです。
よしりんさんは「家守綺譚」はお読みなのでしたっけ?
あの物語とちょっとつながっています。作品の雰囲気は全然違いますが。

そうですね、この本にも、印象に残るフレーズがいろいろと出てきます。
いろいろと言葉を話すオウムが出て来るのですが、この存在が絶妙で。

よしりんさんも「深夜特急」読まれているんですね――というか、あれはベストセラー本だったのでしょうか?私が読んだのが遅かったっちゅだけで・・・^^;
  1. 2008/06/05(木) 23:40:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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◈Ayakoさん、
私が今まで読んだ梨木さんの作品の中で一番好きなのは、文句なしに「家守綺譚」です。
京都が舞台ということを抜きにしても。

確かに、この本のディクソン夫人は、ウエスト夫人を思わせますよね。
ていうか、多分ウエスト夫人って、梨木さんにとって本当に印象深い、「私の人生に欠くべからざる出会い」みたいな存在だったんでしょうねー。
「西の魔女」のおばあちゃんも、同じイギリス人ということもあるし、ちょっと似てる気がします。ウエスト夫人変奏曲バージョン、て感じかなぁ。

Ayakoさんが触れておられる場面、私はむしろ、村田氏に批判されて、「頭ごなしに怒鳴りつけられるのはいやだ」とか言って家出してしまうアヌビス神が、なんちゃー可愛かったです(^0^)。
  1. 2008/06/05(木) 23:47:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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◈yuriさん、
「オットーは、あの私のやんちゃな坊やは」っていうくだりは、本当に悲しいですよね。
なんで、遺跡の発掘に熱心で、トルコ人ともギリシャ人ともイギリス人とも穏やかに暮らしていたドイツ人(もちろんムハンマドやディミトリスもなんだけど)が、死ななきゃなんないの。

あの鸚鵡は、扇の要のような、実に印象的な存在でした。

「共存」、おぉ、そうでしたか。
微妙にニュアンスの違う言葉ですが、「共生」とか「協調」って方が一層しっくりくるような気もしませんか?
(まあ、うるさく言うほど違わない気もしますが。)

それにしても、100年近く前のトルコの話を、実にさらりと書いてしまうんですねぇ。
すごいです。
  1. 2008/06/06(金) 00:02:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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◈tomateさん、
本読みさん、本好きさんにコメントもらえると嬉しいのぅ。
古本屋さんで探すものがあるのも、楽しいよね。
古本屋巡りをしなくなって久しいなぁ・・・。
tomateさんにおススメ頂いた「夢をかなえるゾウ」は、図書館に予約入れてあるんだけど、とんでもない待ち人数なの。今年中に読めるんだろうか・・・。映画化もされるの?
  1. 2008/06/06(金) 00:08:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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お~、オヌールくん!!(って会ったこともないのに馴れ馴れしい...)
深夜特急かぁ、久しく読んでないけどトルコ編ってあったね。ボスポラス海峡に立つと確かに交差点なんだろうなって思うし、宗教についても絶妙なバランス感覚があるよね。

読書量もスピードもこちらに集う皆さんの数倍劣る私。何より「パリ左岸の~」原作本を読んでMikiくんに返却せねば。
そしてニッカのウイスキーでよかったら引き取って梅酒にしてくれろ!
  1. 2008/06/06(金) 22:44:00 |
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  3. しの #79D/WHSg
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No title

◈しのちゃん、
実は、しのはんはオヌールにちょびーっとだけ会っているよ。
多分、オヌールの方では覚えている・・・と、思う。
大体、彼の方でもかなり馴れ馴れしく(いや、親しく、としておこう)しのちゃんのことを話題に上げてるし。

あーあ、トルコ、いつか行ってみたいっす。
さすがにあそこにひとり旅の勇気はないから、そのうちパック旅行にでも参加するっかな。

「パリ左岸」は、いつでもいいよ。だってワタシはもう読んじゃったし。
あぁ、ニッカでも全然問題なかったはずだけど、梅酒をつける瓶がもうないし(T_T)
母親が梅ジュースも作ってるからなぁ。
せっかくなのに残念だよぅ。
  1. 2008/06/06(金) 23:46:00 |
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  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

ディクソン夫人はウエスト夫人を思わせますが、本当のコスモポリタン
だったのでしょうね。私は西の魔女は、ゲド戦記のテナーにも人物が重なりました。
ゲド戦記で思い出しましたが、昨日”風の谷のナウシカ”を少し見たのですが、
ユパ様がゲドと同一人物に見えたのは、私だけでしょうか?

それから”夢をかなえるゾウ”私も図書館の予約しましたが、31人待ちでした。
これは、いつ読めることになるのやら・・・・
  1. 2008/06/07(土) 06:45:00 |
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  3. bullet4071 #79D/WHSg
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◈bulletさん、
ゲド戦記のテナー・・・。
あー、何となくわかる気がします。
なんかこう、「魔法使い」っぽい魔女じゃなくて、賢く、知恵を持っていて、ふつうの人たちよりも自然のことをよく知っている、という存在としての魔女(と呼んでもよいような存在)、てところが共通ですね。
「ナウシカ」、大昔に一度見ただけなので(一応原作も大部分読んだんだけど・・・)、大方忘れてしまいました!残念です~・・・。

「ゾウ」、私もそのくらいの待ち人数です。
どっちが早く回って来るでしょうかね~?
  1. 2008/06/07(土) 21:54:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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