本と旅とそれから 桜のいのち庭のこころ/佐野藤右衛門

本と旅とそれから

桜のいのち庭のこころ/佐野藤右衛門

京都から帰ってしばらくの間、ちょこっと「桜呆け」みたいな気分だったので、それならば、と、図書館から桜関連の本をまとめて借りて来て読んでみました。
その中で本書は、旅行中に著者佐野藤右衛門さんのお宅の桜の庭にお邪魔したこともあって(記事は►コチラ)、ことさら興味深く読んだ1冊です。




桜のいのち庭のこころ/佐野藤右衛門(草思社)

説明がないので状況ははっきりわかりませんが、本書は佐野藤右衛門さんが語った言葉を、他の方が聞き書きしてまとめたもの、ということのようです。
タイトルが示すとおり、桜のこと、庭や庭造りのこと、植木職とは、職人とは、といったことを、佐野さんがゆったりした京都弁で語っておられます。


著者・佐野藤右衛門さんは、16代目。
私、この佐野藤右衛門という名前は、一種の芸名みたいなもので、本名は別にあるのだと思っていたのですが、驚いたことに戸籍上もこのお名前なんだそうです。
もちろん、この名前を継ぐまでは別の名前があるのですが(16代目は「輝一」さんだったとか)、襲名するとなると、一族すべての同意を取り付けた書類をお役所に提出して、正式に戸籍名を変えるのですって。

本を開く前から、もう「当代一の桜守サマのお言葉!」みたいなアタマがありましたので、最初はすべてをありがた~く拝読していたのですが、読み進むにつれて段々と、そんな大仰な受け止め方は佐野さんも喜ばれないだろうな、って感じがしてきました。

ふつうに読めば、典型的な頑固爺さんにして頑固職人の言葉じゃないでしょうか。
で、「いかにも京都人!」て気も。

ふた言目には「関東はあきまへん」。
別にわざわざ言わなくてもいいじゃないよっ・・・と、ついつい思ってしまいます^^;
ソメイヨシノはやはりけちょんけちょんに言われてます。

世の中がどんどん変わっていっても、自然を相手にする仕事はそう変わるものではない、変わることは滅びることかもしれないとさえ思う――と、佐野さんは書かれています。
そして本の後半になると、今どきの世の中、考え方への怒涛の苦言が続きます。

合理化という名の下での画一化、没個性化。
経験を重視しない。いい仕事の価値をわかる人がいない。すぐに答えを欲しがる。何かというと楽をしがたって自然の摂理に反することばかりする・・・。
もう半分諦めているんだ、という佐野さん。


まあ、それだけに疲弊するというのか、衰退するというのか、とことん悪くなってしもうたら、またそこから何かが生まれますやろ。それまで辛抱せなしゃあないですわ。

諦めというか、ほとんどこれは達観じゃないかと。

そして、変えず伝える、ということを本質とする職人という立場で語りながら、気付けば限りなく芸術家に近い領分を語っておられる部分もありました。

文字で読むだけだと、「口うるさい頑固爺さん」みたいな感じに読めてくることもあるのですが、そのたびに、嵯峨野のあの桜の庭を思い出しました。
美しい桜にあふれる庭。そして、個人の庭だというのに、それを望む人には誰にでも見せてくれる。しかも何の見返りも求めず――なかなかできることではないですよ~・・・。

口ではうるさいことばっかり言いながら、実は懐の深い、温かいお人柄の方なのかなー。
そして、誇り高い京都の職人さんなんですねぇ。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 佐野藤右衛門 桜の本 京都の本 
  1. 2010/05/15(土) 10:56:00|
  2. 2010
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/77-8a84e742
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

この本は読んだことなかったです。

でも、テレビや雑誌のインタビューでのお話を聞く限り
いつも一貫してる姿勢が魅力的な方ですよね。
私が佐野さんの家でお見けした時も、
お話を聞いている人に
「女性専用車両なんて、バカげたものを作って・・
わしは、いつもわざと乗ってやるんだ。
駅員が困った人だという顔して注意しに来ても
ボケた爺さんのふりして、とぼけてやるんだとか・・。」
って来ている人を笑わしていました。
ようは、何でも区別するなと、言われたかったようです。
自然界も、いろんな生き物が共存してバランスを作っているのが
一番美しいんだと。
つい、お話に引き込まれてしまう人ですよねー。
もっともっと長生きして、若い人にカツを入れてほしい爺さんです。
  1. 2010/05/16(日) 08:58:00 |
  2. URL |
  3. c-hiyomi #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To chiyomiさん、
佐野さん、いろいろマスコミにも出ておられるんですね。
私は今回の本で初めて佐野さんの言葉を聞き(読み)ました。
女性専用車両ね~・・・^^;
区別するな、か~・・・そういえば、この本の中でも、みんなを平等にとはからうことについて苦言を呈しておられました。人には得手不得手があるものなんだから、と。
現状のあるがままを肯定するっていうのは、ある意味強者の視点という気もするんですよね。自然淘汰に生き残っていける自信がある人じゃないと言えないことだろうと思います。
まあ、それも含め、いろいろな生き物、いろいろな考えの人が共存することで何らかのバランスが作られているってことでしょうか。

>若い人にカツを入れてほしい爺さんです

ホントホント!^0^
そんな感じしますね。
  1. 2010/05/16(日) 23:06:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

lazyMikiさん、こんにちは
本件とちょっとずれますが、女性専用車両で一言。
先月、神戸に行った時のこと。目の前の車両は女性専用車両と記載されてましたが、東京ではお昼間の時間は女性専用ではなくなるので、てっきりそうだと思ってました。
数駅越えてどどっと人が入ってきたんですが、60くらいの年配の女性がじろっと僕を睨んで、「あんた、ここは女性車両やよ!」ってめっちゃメンチを切られました。怖かったぁ!(;Д;)
  1. 2010/05/16(日) 23:57:00 |
  2. URL |
  3. アッキーマッキー #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To アッキーマッキーさん、
えっ?
神戸辺りでは、昼間も女性専用車両は女性専用なんですか?
朝のラッシュアワー時限定じゃなくて?
そりゃ私も知りませんでした~!
・・・そういうことなら、前のchiyomiさんから頂いたコメントの中の、佐野さんが「あんなバカなもん作って」と憤慨された、というのも、むしろ頷ける感じですね。
へ~・・・そうなんだ~・・・(そのおばさんの勘違いじゃない・・・?)。

「メンチ(を)切る」って表現、わかんなくてググっちゃいました^^;
メンチはカツしか知らなかったんだもの。
睨まれちゃったんですね!
そのおばさんみたいな立場にある時、ヒトはものすごーーく正義感(あるいは正義「の味方」感)に満ちてますからねぇ!
そりゃー怖かったでしょうね~・・・ほよ。
  1. 2010/05/17(月) 21:35:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する