本と旅とそれから 西行花伝/辻邦生

本と旅とそれから

西行花伝/辻邦生

最近、読書にしろ映画鑑賞にしろ、比較的ハズレがなくて、毎回「よかった~!」に類することを書いてる気がします。たぶん、それだけ用心深く本や映画を選んでいるんだろうなぁ・・・無意識ですが。
冒険をしなくなったということかも知れず、それも「年をとった」ということかもねぇ、と自分にイヂワルな視線を向けてしまうのですが。

・・・ま、そんなことはともかく。


西行花伝[再読]/辻邦生(新潮文庫)

実を言えば、今回再読したこの本については、ブログUPはやめようか、と思ったりもしました。
1冊の本を読んで――しかもすでに一度読んだことのある本なのに、これだけ心に響いたという経験は今までなくて、そういう思いはむしろ自分の胸の内だけにとどめておく方がいいんじゃないか、という気がわきまして。


その一方で、やっぱり何か書いておきたい思いもあり・・・ということなので、今回は「西行花伝」という作品そのものではなく、それにちょこっと係わるあれやこれやを書こうと思います。




この本を読むのは二度目です。
最初に読んだのは、単行本が刊行されて比較的すぐの頃なので、平成7年。
・・・というと、1995年、ですか。
結構話題になり、辻さんがTVで作品について語っているところなども目にした記憶があります(といっても、定かではありませんけど)。

きっと、何となくインテリを気取ってみたい気分になって手に取ったんだと思いますが・・・読み始めて、「おわ~、面倒なものに手をつけてしまった!」と思ったなぁ・・・。
何しろ分厚いし。漢字が多いし。登場人物が半分くらい藤原姓だ。
文体がみょーにおとなしくって、まだるっこしい気がするし。

だけど、友人に「『西行花伝』読んでるんだー」と話したところ、「えっ!あの分厚いやつ?すごいねー!」と感心されてしまった手前、途中でやめるわけにもいかず。
とにもかくにも、字面だけ追いかけ、最後までページをめくることだけして読んだということに。
感想と言えるほどのものも持たなかったものです。

こんな最低な読書体験だったけれど、それでも私にとって、非常に大きな意味がありました!
――この時の記憶がなかったら、今回再びこの本を手に取ることはなかったでしょうから。

今回の再読の直接のきっかけは、春に吉野で奥千本の西行庵を訪れたことです。
端正に整えられた庭園や、明るい街中の公園に咲く桜とは趣の違う山奥の花。
それを見て西行はどんな思いだったのか――そんなことが書いてはなかったかなぁ、と、この本のことを思い出し、読み返してみることにしたのです。

そして思いもかけない本読み体験をすることになったわけです。

作品の感想は、書き始めれば際限ないでしょうし、きっとこの陶酔ぶりは、傍から見れば滑稽かも知れません。だから書かないんだけれど・・・。
もちろん、吉野や法金剛院など、物語の舞台を見たことがある今と前回では、思い浮かべる情景のリアルさが違う、などということもあるでしょう(といっても、現在の法金剛院は当時と全然違うのだそうですが)。

でも、とてもそれだけのことではありません。

今はただただ、これほどの物語を語ってくれた辻邦生という作家さんに感謝、それだけ。
そして、読書というのもとことん主観的な行為であると思い知るのでした。



webcitron01.gif


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tag: 辻邦生 桜の本 
  1. 2009/06/04(木) 20:35:00|
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Mikiさん

遂にあの分厚い本を読破されたのですね。
学生時代に読んでいたことがかえってよかったのかもしれませんね。
行間を読み取れる人生経験を積まれたわけで。
吉野に行かれた後だけに、感慨もひとしお。
現場を知っているというのは、読書をより面白くさせますね。
私も読んでみようかなあ。それとも、吉野に行ってからの方が感動的かしらん。
  1. 2009/06/07(日) 17:29:00 |
  2. URL |
  3. よしりん #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To よしりんさん、
なんかね、この本はホントにひとり密かに読めばよいや、という感じでした。
実は、最初に読んだ平成7年は、もはや私は(というか、よしりんさんもですが~^^)学生ではなく、社会人になってかなりの年月が経っていたのです。
が、もはや、今振り返ると、「学生時代」と思ってしまうほどに昔のことに思えます。

それにしても、この本は、誰にでもオススメできるという気もしないのです。
読み手がその時、どんな心持ちでいるかによって、かつての私のように、全然受け入れる気がせず、何だか難しいものに思えるだけ、ということも十分あり得ると思います。

吉野に行ったことは、今回再びこの本を読むきっかけになりましたが、そのこと自体は、本を読む感動と直接関係はないと思います。
よしりんさんがこの本と出合う運命ならば読むことになるし、まだならばまだでしょう。
自然に巡り会う、という感じの本なのです。ご無理はなさいませぬよう^^
  1. 2009/06/07(日) 19:58:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

心を池に例えるなら(←なんだかまた変なこと言い出したよ…)
読書はその池に石を投げ入れる行為に似ているような気がします。
投げ入れる石の形や大きさによって波紋の形も変わりますけど
綺麗な波紋を残すには、池の状態はもっと大切ですよね。
雨風の日と晴天の日でも違うでしょうし、干からびた池にはそもそも波紋などできませんし。
(雨の日用の石、なんてのもあるかもしれませんね…^^)

きっとMikiさんの池には水が豊かに注がれて、
そこに「西行花伝」が美しい波紋を描いたのでしょう~。
私にもいつか、そんな読書体験が訪れますように…。

そうそう、今やっと、図書館から桜井京介シリーズの最新刊「黒影の館」が届いて
これから読み始めるところです!ドキドキ!
  1. 2009/06/08(月) 11:28:00 |
  2. URL |
  3. yurinippo #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To yuriさん、
とても興味深い(真摯な意味で)コメントをありがとうございます。
やはり、ブログUPしてよかったと思わせて頂きました<(_ _)>

心とは――。
それはまさに、「西行花伝」に語られていることのひとつでもあります。
ふだんのペースと比べて、はるかにゆっくりじっくり読んだつもりなのですが、でもまだまだ自分の言葉で語れるほどにはわかっていないのが残念ですが・・・。

今回のような本読み体験は、かけがえのないものと思う一方で、こんなことをちょくちょくやっていたら身がもたん、みたいな気がするのです^^;
20~30年に一回ぐらいでいいかなー。
ふだんはもっと気楽にいきたいゾ。

をを!出ておりましたか(チェックを怠っていた)、建築探偵。
・・・というわけで、さきほど、うちの図書館に予約を入れました。
神代センセの番外編ももう1冊出たのですね。きゃー、ワタシも早く読みたい。
  1. 2009/06/08(月) 23:59:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

lazyMikiさん、こんにちは
西行家電ですか?いや、違った、西行花伝ですねよね、って言ってもスミマセン、知りませんでした。読んだことないんで、さっそく図書館で借りてきます!それにしても、嵯峨菊、なまめかしいですね。アップしてすぐにコメントしようと思ったんですが、コメントする場所が見つからず残念でした。菊もこんなになまめかしい菊があるんですね。菊とは思えない美しさにしびれました。
僕のサイトにクリスマスカードを載せたので、よかったら遊びにおいで下さい。日頃の感謝を込めて。
  1. 2009/12/23(水) 10:44:00 |
  2. URL |
  3. アッキーマッキー #79D/WHSg
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No title

To アッキーマッキーさん、
すみませんでした、嵯峨菊の記事、リンクエラーで≪旅編≫にちゃんと飛べてませんでした。修正したので、もしよかったら、≪旅編≫の方の続きもまた見てやって下さいね。

西行花伝、初めて読んだ昔は、ただただ長くてコムズカシイ小説でした。
それが今年は深い感動が。
受け手である私が年をとり、マインドセットが変わることで、同じ本がこうも違って読めるものかと驚きました。

クリスマスカード、見せて頂きました!^^
さすがアッキーマッキーさん、洗練された都会のクリスマス・・・美しい~♪
  1. 2009/12/23(水) 23:34:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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