本と旅とそれから 宵山万華鏡/森見登美彦

本と旅とそれから

宵山万華鏡/森見登美彦

祇園祭に実際に出かけたことはありません。とにかく人が多そうだ。
でも、何だかこの本を読んで、もしかしたらホンモノの祇園祭宵山よりも素晴らしい宵山の情景を見ることができたのでは、と思うのでした。



宵山万華鏡/森見登美彦(集英社)

森見さん、といえば、名高い「アホ大学生物語」作家。
そして、これまでの作品で唯一その例外だったのが「きつねのはなし」――森見作品の中で、私が一番好きな本。

今回のこの1冊では、一連の「アホ的物語」と「きつねのはなし」の作風が、風変わりかつ絶妙な交錯を見せています。

素敵だ・・・!!

「くされ大学生物語」の部分は、もしかしてなくてもよかった・・・か?
どんなアホな話にも、裏に回れば妖しくも心魅かれる物語が隠れているかも、ということかも知れません。

夏の宵――夕暮れ時というのは、場所を問わず妖しい時間。
それが京都で、年に1日の祇園祭の宵山の日となれば・・・タイヘン妖しい!

ふと気づけば、自分の足が地面からちょっとだけ浮いているかも知れない。
そして、同じ朝が繰り返される。目が覚めれば、今日も明日も明後日も宵山の朝――。
暑い夏の盛りだというのに、ひんやり冷たい汗がひと筋背中をつたう・・・。
抜け出せない1日。萩尾望都さんの「銀の三角」を思い出すなぁ。

森見さんの、この古都の香り高いさりげないホラー、本当に美しい。
「ホラーというほど怖くはないでしょう」と言うひとも多そうな、わずかな怖さ。

万華鏡、とタイトルに付けるにふさわしい、色鮮やかな祭りの夜。
それが映像ではなく、ただ文字によってのみ描き出された情景であることに森見さんの筆力を感じます。万華鏡を覗いた時の、上下も左右もなにもかもぐるぐるしてくる感覚。宵山の烏丸通り一帯は、空間も時間もぐるぐるな迷宮・・・。

こんな素敵な迷子体験は、現実の京都ではなく、物語の中の京都でなければできないように思うのでした。


webcitron01.gif


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tag: 森見登美彦 京都 京都の本 
  1. 2009/08/21(金) 22:35:00|
  2. 2009
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No title

トワイライトゾーンや世にも奇妙な話似ている、
夏の夜に読むには最適な本でしたね。

この宵山を読む前に、京極夏彦の”厭な小説”を読みましたが
まったく違うアプローチなのですが、少し似ている部分もあります。
ネタばれになるので書けませんが、厭な小説ってわざわざ厭なこと
小説にしなくってもいいのにって感じの、題名通りの
内容の本なのです・・・・w

1Q84を実家の母が買って、読み終わったのでで送ってもらいました。
図書館108人待ちで、長い間待ってもうそろそろってところでしたが、
予約解除しようと思います。
やっぱりお金持ちの人は、少々高くても買うんだなというところです。
  1. 2009/08/22(土) 08:17:00 |
  2. URL |
  3. bullet4071 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

妖しくて美しいお話でしたね~。
人混みを歩いてるだけでぐるぐるしてくる私ですが
きっと宵山なんて実際に行ったら本当に迷子になって帰れなくなるんだろうな…
(違う意味で)
おっしゃる通り、ほんのちょっぴりの怖さが素敵なスパイスでした。
最初と最後のお話の姉妹愛が印象的だったので
私にとっては「可愛くてカラフルなお話」って印象が強かったです。

こちらの3冊、どれもとてもよかったのですね!
あさのあつこさんの時代ものって読んだことなかったので興味津々!
図書館の予約枠が少しあいたので、予約してみようかな~。
  1. 2009/08/22(土) 14:46:00 |
  2. URL |
  3. yurinippo #79D/WHSg
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No title

To bulletさん、
その辺の映画を見ていないんですよね~・・・。
特に、「トワイライトゾーン」をタイムリーに見ておかなかったことは悔やまれますです。
何かというと引き合いに出される作品ですもん。

「厭な小説」、ですか。京極さん、相変わらずヘンなタイトルの本出しておられるのですね。
でも、ちょっと読みたい。
・・・いつになるかわからないけど図書館に予約入れようかなぁ。

>お金持ちの人は、少々高くても買うんだな

先日、親が読んでみようかなというので、ワタシがAmazonにアクセスしたのですが、上下巻がそれぞれ2000円近くするので、「やめなよ!そのうち文庫になってから買えばいいよ!」と騒いで買わなかったことがございます^^;
村上さんがノーベル賞をお取りになるまでに読めればよしということで・・・。
  1. 2009/08/22(土) 20:45:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To yuriさん、
金魚のイメージが鮮やかでした。
その後、やぎこさんとこでハリエのバウムクーヘンの箱に、季節柄で綺麗な金魚が描かれているのを見て、「やっぱ夏は金魚なのか!」の思いを強くしました。

ここのところ、まだブログUPはしていませんが、怪談本を2冊ほど読みました。
その片方があさのさんの作品だったのですが、同じ「ちょっと怖い」にも、作家により、作品によりずい分違いがあるものだな~と思いました。
やっぱり私はグロい怖さや重い怖さはあまり好きではありません。
今作の森見さんのように、涼しげでひんやり、といった感じの怖さが好みです^^
  1. 2009/08/22(土) 20:50:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

こんにちは。はじめまして。
なるほど確かに「アホ的物語」と「きつねのはなし」のライトホラー作風が、
絶妙にブレンドされていますね。
個人的には「太陽の塔」の高薮が再登場しているのにびっくりしました。
「太陽の塔」で言及されてた高薮に惚れた女性というのはひょっとして・・・。

ところで現在朝日新聞では森見さん
またまたアホ全開大学生小説を書いてますね。
  1. 2009/08/24(月) 17:32:00 |
  2. URL |
  3. 木曽のあばら屋 #79D/WHSg
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No title

To 木曽さん、
(・・・と、お呼びするのはいかがでしょうかっ。
つい、「木曽殿」とかお呼びしたくなりますが、義仲じゃあるまいし、ですね。)

はじめまして。コメントありがとうございます^^

たっ「太陽の塔」、森見作品では最初に読んだものですが、固有名詞を中心に、忘却の波の彼方にさらわれつつあります・・・^^;
図書館で借りるの専門だと、こゆ時にちゃちゃっとチェックできないのが口惜しゅうございます。そっかー、つながってるのかー。

「ぽんぽこ仮面」、先ほど第65回を切り抜きました。
一応初回から切り抜いて取ってあるんですが、あんな扱いにくい形態のシロモノ(びよんと長い・・・)、読み返すことがあるとはとても思えません。
京都でスマート珈琲店に行きたいです。

明日あたり、木曽さん(やっぱヘンですか?)のとこにもお邪魔させて頂きたいと思いますので、その節はどうぞよろしく!
  1. 2009/08/25(火) 00:09:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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