本と旅とそれから 神の守り人/上橋菜穂子

本と旅とそれから

神の守り人/上橋菜穂子

このシリーズ、すごい人気で、上橋菜穂子さんへの賛辞は時に度を越している、と思えるようなのも目にします。
とはいえ、第1作目を読んだ時に私が感じた違和感は、第4作ともなるとさすがにあまり気にならなくなり、今回はこれまでで一番物語世界に入り込めて楽しめました。



神の守り人(上)(下)/上橋菜穂子
(新潮文庫)


しかも、今回は上・下巻の長編。
好きなの、長編。大きな物語は長くなりがちですよねっ。

今回も・・・というか、昨今の児童書のような大人向けのようなジャンルの本は、扱う主題が難しいですね~。
大の大人でも意見が分かれるような・・・。
そう。
この本を読んで、J.R.R.トールキンの「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」を思い浮かべました。
主題がまったく同じなんだもの。

目の前に、何ものをも凌駕する強大な力が存在する時、それを手にして世のために役立てんとするか。あるいはそんな力に頼ることを良しとせず、それを放棄するか。


「神の守り人」では、それは幼い少女に宿った破壊神の力。「指輪」では言うまでもなく、「力の指輪」です。
ただ、「指輪」では、メインの対立軸が明解な善と悪だったのですが、本書の場合は、対立するどちらの側も、根底にあるのはより良い世の中を作りたい、という善意。
だから一層話がややこしくなるわけですが。

「指輪」にも、「善」の側の葛藤が描かれているんですけどね。
フロドが、ガンダルフやガラドリエルに指輪を渡そうとする――自分より、力も智恵も優れた者ならば、指輪を滅ぼすかわりに世の中のために役立ててくれる、悪と戦う武器としてくれるのではないかと思って・・・。
そして二人ともそれを拒み、真の智恵を示すのですね。

「指輪」が世に出た当時、この「力の指輪」は核兵器を暗示しているのではないか、ということが話題になったとか。が、トールキン自身がそれを否定したそうです。
しかし、トールキンの意図はともかく、その存在はまさに核兵器。
そして、本書に描かれる、少女に秘められた神の力もしかり。

人間、追い詰められると何をするかわかりませんでしょ。
最後の瞬間にも理性的な判断ができる、なんて思い上がっちゃいけないと思います。
ていうか、理性的な判断とみなされるものでさえ、正しいとは限らないかも。
人間の理性ってどこまで信じていいんだか――って私、別に性悪説を支持してるわけじゃないけど・・・。

さらに本書には、虐げられた民族の問題も描かれており、それは現実世界における同 和問題すら想起させるような、これまた非常にシビアな主題。
すごいな~、これだけ重い主題を詰め込んで、それでも物語をどんより停滞させずに読ませてしまうっていうのは、やっぱり作者の力量ですね。お見事。


webcitron01.gif


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tag: 上橋菜穂子 守り人シリーズ 
  1. 2009/09/16(水) 22:34:00|
  2. 2009
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No title

あ~~とうとうでちゃったかぁ~

私、実は前作をまだ読んでないのです。買ってそのままの状態。
読み出すと他の事に手が付かなくなるので、堪えて堪えて・・・忘れたって感じで。

でもこの際最終巻まで待ってまとめて読むって手もアリかなと。

指輪物語も一度最初から読み直したいなぁ~
なんか最近頭が「本の頭」になってなくて、文章読みながら他の事考えちゃったりして集中できないのですが、物語に飢えてるのもまた事実。
ぱっとその場だけ集中してぱっとその後切り替えられるようになりたいです。

  1. 2009/09/16(水) 23:58:00 |
  2. URL |
  3. lazybug #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To Ayakoさん、
>堪えて堪えて・・・忘れた

だははは~ひぃひぃ。
んもぅ、相変わらずいい味出してますナ、Ayakoさん。
あ、もしよければ「神の守り人」お送りしますですよ?
前作を読んでからにしますか?
もし、よろしければいつなりとお知らせ下さいまし。

最終巻まで待つ、というのは確かにアリますねぇ。
が、まあこのシリーズはすでに完結しているから、文庫化は定期的に行われるんですよね。遅筆作家さんの続編を待つのはつらいですけどね・・・。
(そういえば、次のyomyomに、また十二国記の番外編が載るそうです。)

私、指輪は英語と日本語合わせて5回以上読んでいるから、他の本と比べてかなり記憶が鮮明です。やっぱり、ひとつの物語の世界を長く愛したいと思ったら、1回読んだだけじゃ全然ダメですね・・・。
といっても、読みたい本は後を絶たないから、なかなか同じ本を何度も読めない・・・。
  1. 2009/09/17(木) 21:41:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

夏休みに読もうと思って買ってありましたが、
娘に先に貸したら帰ってこない…
早く読みたいです~~
このシリーズ(に限らないですが)、敵役にもちゃんと理屈があって
その立場だったらそうせざるを得ないよね~、
てなことが多いのですが、それも大人になって分かる事かも知れないですね。
子供のころあんなに憎たらしかった
(アルプスの少女ハイジの)伯母さんやロッテンマイヤーさんも
今見ると「…まあ、そうなるよね。」と同情してしまいます。(笑)

「利休にたずねよ」も読みたいのですよ!
どれくらい待つのかなぁ。また図書館の予約枠が進まない本で埋まってしまう…

それからそれから、「弥勒の月」のところにTBいただいて行きますね!
  1. 2009/09/18(金) 09:33:00 |
  2. URL |
  3. yurinippo #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To yuriさん、
小学校というと、「母と子の読書感想文」なんてないんですか?
yuriさんと娘さんお二人の「神の守り人」。
なんかすごい傑作ができそう。コンクールとかに選ばれますね~^^
わくわく。

(えっと?何の話しだったのか?)
あ、そうそう、大人になって目線が変わってみますとね。
大人キャラに共感できることもあるよってですね。
ところがこの「神の守り人」では、むしろ最初から共感できるのは父の方で、娘の方が敵役なのですね(これは別にネタバレではありません)。
娘さんが1日も早く本を回して下さいますように。なむなむ。

「利休」、読み応えのあるハードな(?)時代小説です。
昔どこかで、一畳半の「ナニこの狭さ?!」な茶室を見たことがあるような気がするのですが、どこだったんだろうかなぁ・・・。あれが利休の茶室だったのかなぁ・・・。

TBどうもです~。
  1. 2009/09/18(金) 21:39:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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