本と旅とそれから 利休にたずねよ/山本兼一

本と旅とそれから

利休にたずねよ/山本兼一

多忙・多読のbulletさんとお話していて読みたくなった一冊。
直木賞受賞作とあって、それはそれは待たされましたが、ようやく。



利休にたずねよ/山本兼一(PHP研究所)

ホントに――作家さんというのも大したものです。
読んでいて「本格」とか「渾身」という単語が浮かぶ大作。
私などは茶道といったって、中学時代に学校で習った超エントリー・レベルの所作(しかもその90%を忘却済み)しかわかりませんが、当然ながら世の中には、お茶に詳しい人も多いはず。

茶道の大家だって時代小説を読むのがお好きかも知れません。
そういう潜在読者を向うに回して、千利休という稀代の茶人の人物像を様々な角度から描く――その緻密さ、描写の豊かさには感じ入ります。

利休切腹の当日から筆を起こし、前日、数日前、数ヶ月前、数年前、と時を遡っていく。そして最後に、利休の茶が、侘び茶でありながら内に情熱を秘めたものとなったその原点となる出来事が語られ、さらに、エピローグ的に、利休の死の直後、残された妻が何をしたかが付け加えられる物語の構成になっています。

秀吉と利休。
時代劇や時代小説の主題としてこれほど好まれる人間関係というのもあまり多くはなさそう。
秀吉はなぜ利休に切腹を命じたのか。そして利休はそれをどう受け止めたのか。

しかし・・・私なりに秀吉的視点から利休という人間を見ようとしてみると、そりゃあ憎ったらしいだろうなぁ・・・。
権力も財力もこの世で一番持っているのに、美的感覚や芸術的才能といった、努力しても手に入らないものを天から恵まれた人間が目の前にいれば。その人間が、自分に頭を下げてみせても心の中では自分のことを俗物と思って嘲笑っていることがわかっていれば。

世俗的な力と芸術的な力。
財力があれば芸術品を買うことはできるけど、美を生み出す力をお金で買うことはできず、だからこそ、芸術家には天賦の優越性があるわけです・・・。
でも、だからといって利休に何の苦悩もなかったというわけではなく――。

次に茶室というものを見る機会には、少しだけ違ったものを感じることができるかも、などと思ったりもしました。


webcitron01.gif


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tag: 京都の本 直木賞 山本兼一 
  1. 2009/09/16(水) 22:42:00|
  2. 2009
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No title

あーこれ面白そう~
千利休はなんか私の中では意図せず注目してしまう存在でして、だからと言って私が茶道に詳しいといえば、もう恥ずかしくなるぐらい知らないのですけどね。
高校2,3年の時茶道部でしたが、1回も部活に出たことありませんです、はい。
(ちなみに1年生の時は真面目に美術部でした)

ドラえもんがいたら是非過去に行って、しかも透明人間になって秀吉と利休の会話を聞いてみたいですね。
そしてお互いに影でどんな事言ってるのかとか(笑)
いや、ヘタに口に出さなかったかしら・・・

また読みたい本リストが長くなります。
  1. 2009/09/17(木) 00:04:00 |
  2. URL |
  3. lazybug #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

いやー多読じゃないです。mikiさんやhleavesほどじゃありません。

山本兼一さんは、利休の美意識ルーツと高麗の女性(緑釉の壷)を結びつけていますが、
侘び、さびという概念は、日本人のDNAに深く刻まれていて、意識せずに
行動規範として、日本人であれば深いところで身についているのでは?と思いました。
なのでイタリア人の宣教師ヴァリニャーノには、お茶は苦いだけで、まったく
理解できなかったのもわかります。

登場人物もみても豪華でした。古渓宗陳や細川忠興、三成や家康が
聚楽第や利休庵にいて利休と会話しているのを見ているかのようでした。

ジパング島発見記も読みましたが、こちらもなかなか面白かったですよ。



  1. 2009/09/17(木) 21:35:00 |
  2. URL |
  3. bullet4071 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To Ayakoさん、
・・・というのは、えっと、茶道部幽霊部員だったてことじゃな?
ま、やっぱり勝手なイメージとしては、Ayakoさんは茶道部より美術部な気がしますよー。
私にはいろいろ語れるような知識はないんだけど、でも、茶道ってやっぱり形式美を追求するもののような気がしますです。
Ayakoさんは、私の印象では、自由にイメージをふくらませて創造していくタイプかなー。

それはともかく。

見てみたいですよねぇ、秀吉と利休のふたりだけの茶席。
ネクラな雰囲気なのかな・・・うわべは礼を尽くしつつ、その下からにじみ出る名状し難いドロドロした感情・・・みたいな?
信長と光秀ってのもちょっと見てみたいけど、あれは信長が一方的にいじめ役なのかな。
歴史に残る確執ってのも、そこまでいけば立派かも・・・。
  1. 2009/09/17(木) 21:51:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

To bulletさん、
そんなこと~。
特にbulletさんは(hleavesさんもですね)、いろいろとご多忙なのにガンガン読んでおられて、やっぱり本当に本が好きな人は、どんなに忙しくても本を読むための時間を見つけるものなのだな、としみじみします。

確かに、この本の中の利休は、ちょっとドラマチックに脚色されているかな、という気がします。同じ侘び茶でも、利休のそれが他の茶人のものと違うきらめきを持っている、その理由として若い頃の悲劇的な恋を描いているわけだけど・・・。
まあ、物語だな、という感じはありますね~(←冷めた読者?)。

先日、この本から興味を持って図書館で茶席の花についての本を立ち読みした(借りればよいのに)のですが、木槿は一日花なので、一期一会の茶の心にかなう、とありました。
ただ、花びらが弱くてお店で買うことはできないので、茶道を志す人は是非お庭に植えましょう、ですって。茶道ではとても人気の花らしいです。

私も山本兼一さん、もう少し読んでみようかな~。
  1. 2009/09/17(木) 22:14:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
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No title

茶道をやっている身としては、読みたいのがやまやまなのですが、まだ手つかずです。なぜ次々に興味ある本が出現するのか、ほんとに困ってしまいます。明日からの5連休に読みたい本が山積みです。
  1. 2009/09/18(金) 21:16:00 |
  2. URL |
  3. barnes_and_noble #79D/WHSg
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No title

To barnesさん、
そうですのぅ!barnesさんは茶人(さん)でした!
(お茶をなさっている方は、どなたも「茶人」でいいのかしら?)
そしてbarnesさんは本読みさんでもありますからね~。
是非とも感想をうかがいたいです^^

お茶席の食べ物の話もちょこちょこ出てきて興味深いです(私はまず食べ物)。

濃茶って、「練る」っていうんですか?
(初歩すら知らない者はツラい。)
  1. 2009/09/18(金) 21:51:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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